KIRJOJEN PUUTARHA
フィンランド文学情報サイト

 

 tunnus おすすめ作品

höyhenketju    原書名:  Höyhenketju
 (羽根の鎖)
 作者名:  Hannele Huovi, 1949~
 ハンネレ・フオヴィ
 出版社 / 年:  TAMMI / 2002
 ページ数:  240
 ISBN:  9513125998
 分類:  YA
 備考:  Jättityttö ja Pirhonen
 Urpo ja Turpo Villissä lännessä
 Vladimirin kirja
 Ahaa! sanoi Pikkuruu
 Valeikkuna
 Karvakorvan runopurkki
 Taivaanpojan verkko
 Miinalan Veikon nyrkkeilykoulu
 Suurkontio Tahmapää
 Suurkontio Tahmapää rakentaa
 Gepardi katsoo peiliin
 Vauvan vaaka
 Maailman paras napa
 Matka joulun taloon
 蜜蜂の館
 『羽根の鎖』

【要約】

人間の住む「影の世界」に生きる主人公の少女エレイサが、「鳥世界」で体験する成長物語。鳥を愛するエレイサには、鳥の世界や言葉を解する不思議な力がある。ある日、天高く壮麗に舞う鳥世界の守護神の息子タカを目にし、その凛とした飛翔をもっと見てみたいと思い、惹かれるままに両手を伸ばして肢をつかもうとした途端、鋭い爪で両目を奪われてしまう。鳥世界の裁判にかけられたエレイサとタカは、お互いの軽率で省みない好奇心から生じた罰として、二人は羽根の鎖でつながれる。羽根の鎖の魔法を解くために、「鳥の足」に住む三人の魔女を訪ねに一緒に旅に出る。旅を通して、エレイサとタカが知りうるものとは?他人を受け入れる気持ちを育み、物事や行為は、すべてにおいて意味があるということを学んでゆく。

【抜粋訳:エレイサのダイアローグ p.9-より】

サンザシに止まってチュンチュン鳴いているスズメが好き。小川の水面にしな垂れるヤナギに、かわいらしい巣をぶら下げているヤナギムシクイが好き。それに、庭の石の上でチョコチョコ踊っているハクセキレイも大好き。シッポを上げ下げする姿は、なんだかいつも忙しそう。

(---)

鳥の声もまねすることができる。そういう逸話も聞いたことがあるわ。もともと興味はあったのよ。なんだか自分が鳥だったかのような特別な気持ちもあるわ。鳥たちの春の群れに嬉しそうに混じって、枝から枝へ飛んでいたような、お日さまの光を浴びてピョンピョン飛び跳ねたり、嘴いっぱいにハエをくわえて巣へ運んでいったりしていたような。鳥の翼は、あたしにとって大きな不思議だと思う。嬉しそうに飛ぶことも、鳥の骨が空洞だということも不思議。鳥の骨は小さなフルートで、夜行性の鳥が奏でる音は嘴から外へフゥーと流れ出すんだと想像することもある。でも、カラスやウズラクイナの声にぷっつりと邪魔されて、骨から鳴き声が出るわけはないんだと思い知らされるの。

(---)

つまり、あたしは鳥のことをよく知っていた。実際に、鳥たちには鳥の王国があるっていうことが分かったの。鳥の王国では、それぞれが自分の居場所を持っているの。あたしが言っているのは巣のことじゃなくて、鳥同士のヒエラルキーのこと。巣作りする方法は鳥によって違うの。でも、彼らは誰から教わるわけでもなく作ることができる。それぞれが自分のテリトリーを周りに作り出す必要があって、鳥によってはテリトリーがとても狭いものもいるし、すごく広いものもいる。タカとかワシなんかは、もっとずっと広大な森や深山を必要としているの。

それから、鳥たちには守護神がいるっていうことも分かったの。彼もハゲワシの一人よ。鳥の守護神が飛んでいる姿は一度も目にしことはないけれど、あたしは彼のことをハゲワシと呼んでいる。彼が大地を歩く姿は威厳があって、鳥というよりもほんとうに守護神を思わせるの。人間のような風貌なんだけれど、人間の血は引いていない。彼の姿は何度も目にしていたし、いくつもの鳥たちの群れを支配して、先導する立場に立っていた。つまり、鳥たちの王様ってところね。

彼があたしのことを知っているってことも分かった。 「また、あの子があっちからやって来るぞ!あの変わったエレイサだ!」と、鳥の守護神が言っているのを耳にしたことがあるから。 「エレイサって誰?」と誰かが尋ねると、守護神は「鳥を愛している少女だよ」と聞こえるように大きな声で言っていた。あたしは、ほんとうに鳥のことを愛していたし、多くの鳥がそのことを感じ取ってくれていたから、あたしは怖がられることはなかったの。

(---)

あたしには、ほかの人にはない特別な力がある。鳥は、女の子なら誰のところでもやみくもに飛んでゆくわけじゃない。でも、あたしがその力を使えば鳥たちが寄ってくる。あたしの頭にはネットが張り巡らされているみたいだった。鳥たちは、鳥笛に逆らえないみたいに寄って来ずにはいられないの。いつも、あたしは大きい種や小さい種を両手に握って空へと差し出すのよ。

(---)

事故が起こったあの日も、そんな感じだった。そして、あたしの辛くて恐ろしい旅が始まった。そのことを、今から話すつもり。

文/訳 末延弘子 ハンネレ・フオヴィ著『羽根の鎖』(2002)より


おすすめ作品の目次へ ▲このページのトップへもどる