【要約】
理想の高いチーター、社交的になれないバク、エステに通うサイ、殻に閉じこもるのが怖いカメ、成長しても袋から出てこないカンガルー、そして、不機嫌なフタコブラクダ。カメレオンは保護色を利用して社内で成績を上げ、カンガルーの子どもは大人になってもなかなか袋から出てきません。森から出てきて都会のゴミ箱を漁るクマを、ホームレスの男性は女性だと勘違いして不憫に思います。
ほかに、ワニやトカゲ、キリンやカワイノシシ、サメやキンシコウといった、サバンナや熱帯雨林で生きる動物たちも登場します。生態も生活空間も人間とはちがうはずなのに、フオヴィの描く動物たちは、わたしたち人間を、あるいは、わたし自身を、想起させて映しだします。
金持ちのロブスターは虚栄心ばかり追い求めて、なにかを忘れてしまいました。ゾウは、はたして見た目どおりにおっとりしているのでしょうか。百獣の王ライオンがなににも動じないのは、なぜでしょう。檻のなかのヤギが恋しく想う相手とは?そして、人間を飼いならして品種改良を試みるダックスフントは、なにを教えてくれるのでしょうか。
『チーターが鏡をのぞく』は、版画家キルシ・ネウヴォネンの作品コレクション「世界の動物画」(1987-88)に触発されて、フオヴィがヤングアダルト向けに書いたものです。フオヴィは、動物の生態や習性を科学的に細やかに踏まえつつ、鋭くも豊かな想像力を最大限に駆使し、現代寓話に綴りました。15年の歳月をかけて完成した同書は、トペリウス賞候補にあがるなど高い評価を得ています。また、ネウヴォネンは、これらの作品を含め、芸術家としての傑出した活動や功績を称えられ、1997年にフィンランド政府よりスオミ賞を受賞しています。
|