KIRJOJEN PUUTARHA
フィンランド文学情報サイト

 

 tunnus おすすめ作品

Miinalan Veikon nyrkkeilykoulu    原書名:  Taivaanpojan verkko
 (空の子どもの緑の網)
 作者名:  Hannele Huovi, 1949~
 ハンネレ・フオヴィ
 出版社 / 年:  TAMMI / 1988
 ページ数:  28
 ISBN:  9789513123833
 分類:  児童書・絵本
 備考:  Ihme juttu!
 Jättityttö ja Pirhonen
 Urpo ja Turpo Villissä lännessä
 Vladimirin kirja
 Ahaa! sanoi Pikkuruu
 Karvakorvan runopurkki
 Miinalan Veikon nyrkkeilykoulu
 Suurkontio Tahmapää
 Suurkontio Tahmapää rakentaa
 Gepardi katsoo peiliin
 Vauvan vaaka
 Maailman paras napa
 Matka joulun taloon
 Höyhenketju
 『羽根の鎖』

【要約】

色にはそれぞれ物語があります。白にも、青にも、緑にも。黄にも、赤にも、オレンジにも。空から落ちたわた雲は湖畔にそっと咲くワタスゲになり、太陽の子どもは空から緑の春を釣りました。青い瞳に青い服を着た少女シニッカの思い出や、母なる大地の恵みをうけて太陽を称えるために咲いた黄色いタンポポの記憶。紅葉がオレンジなのは、空のコックが秋に太陽のスープを注ぐから。人間が赤なしでは生きられないのは、それが熱の色だから。そして、黒が秘密の色なのは、宇宙のいっさいが詰まっているから。

ハンネレ・フオヴィが詩的に、そして、清冽に、見えている色の神秘に迫ります。

【抜粋訳】

 空にはちいさな男の子がすんでいました。男の子はつりがだいすきでした。おとうさんの太陽が、夕方になると空の玄関からぴょんと転がりこんでくると、男の子はおとうさんにだきついて、つりをしたいとせがみました。
「よしよし、わかった、釣ざおをつくってあげよう」
 おとうさんの太陽は釣りざおをつくってあげると、男の子は雲のうえでずっとつりをしていました。金色の釣り糸をびゅんとたらすと、きみどりの草がひっかかって、ぐんぐんのびてきました。男の子が引っぱりあげると、みどりの魚がつれました。
 しばらくすると、あきてきたので、男の子はおとうさんに新しいつり道具をおねがいしました。
「よしよし、わかった、やなをつくってあげよう」
 おとうさんの太陽は、みどりのあみで、魚をとるための小さなやなをつくってあげました。
 男の子はそっと雲のしたにおろすと、ちいさなしげみがひっかかりました。春になると、どのしげみもそうであるように、それもみどりいろをしていました。
 たくさんのしげみがみどりにひっかかりましたが、やなにもあきてきたので、地上をすっぽりつつむような網がほしいと、男の子はおとうさんにおねがいしました。
「よしよし、網をつくってあげよう」
 おとうさんの太陽は、みどりの網を編んであげました。それは、はしっこが見えないくらい、とても大きな網でした。
「これならうんとつれる!」男の子はうれしくなって、おとうさんにとびついてぎゅっとだきしめると、網をかかえて雲から雲へいそいでかけだしました。
 地上に網をなげたとたん、いっきに緑が広がりました。
 子どもたちといっしょに春を見にきていたおとうさんが、うれしそうにこう言いました。
「ごらん、みんな、春が芽をだした!」
 でも、こどもたちは頭を横にふりました。だって、森の木々が空の子どもの緑の網に引っかかったのが、子どもたちには見えていたんですもの。

文/訳 末延弘子 ハンネレ・フオヴィ著『空の子どもの緑の網』(1988)より


おすすめ作品の目次へ ▲このページのトップへもどる