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Suurkontio Tahmapää    原書名:  Suurkontio Tahmapää
 (おおきいくまのタハマパー)
 作者名:  Hannele Huovi, 1949~
 ハンネレ・フオヴィ
 出版社 / 年:  TAMMI / 2000
 ページ数:  71
 ISBN:  9789513119416
 分類:  児童書
 備考:  Ihme juttu!
 Jättityttö ja Pirhonen
 Urpo ja Turpo Villissä lännessä
 Vladimirin kirja
 Ahaa! sanoi Pikkuruu
 Karvakorvan runopurkki
 Taivaanpojan verkko
 Miinalan Veikon nyrkkeilykoulu
 Suurkontio Tahmapää rakentaa
 Gepardi katsoo peiliin
 Vauvan vaaka
 Maailman paras napa
 Matka joulun taloon
 Höyhenketju
 『羽根の鎖』

【要約】

おおきいくまのタハマパーは、森の中の嵐で倒れたモミの木の下に住んでいます。力もちでおだやかでやさしいくまです。もちろん、人間は食べたりしません。食べるのはベリーとハチミツで、大好物は大きなソーセージです。ときどき、ゴミ箱に捨ててあるソーセージを拾うので、それを目撃した人間に警察へ通報されたこともありました。「どうやら人間はじぶんを恐がっているみたい」と、タハマパーは考えます。

タハマパーの家に、元気のいいりすのタンッピと、つんつん針をもったはりねずみのヴェイッコと、かっこいい角をもったヘラジカのイーロが訪ねてきました。そこで、タハマパーは「みんなで友だちになろう」と提案しました。しかし、「友だちってなんだろう」とみんなは頭をつきあわせて考えます。

角がある子もいれば歯がある子もいる。針をもっている子もいれば毛がある子もいる。おいしいと思う食べ物もちがうし、散歩をしながら見える景色もちがいます。それでも、ありのままの自分でいられるのが友だちなのです。四人は友情同盟を結んで、困ったときは助けようと誓いあいました。みんなは前足や蹄で抱きあいました。もちろん、つんつんしているヴェイッコとも「友だちなら抱きしめられるのです」。

さっそく困ったことが起こりました。

町の公園に遊びにいったイーロは、人間の女の子に馬のほうがいいと言われました。落ちこむイーロに、「馬よりかっこいいよ」とタンッピは励ましました。かわって、あわてんぼうのタンッピは、ある日、ナッツをくれるおばさんを"手なづけた"と言いました。ところが、もらったナッツ袋をどこに隠したのか忘れてしまった様子です。よく気が回るヴェイッコはナッツ袋を探し当てて、食べすぎで太ったタンッピに「ときには忘れたほうがいいよ」とアドバイスしました。

ある日、森からいやな匂いが漂ってきました。自然写真家が木のうえにテントを立てて、死骸でタハマパーをおびき寄せようとしていたのです。気のいいタハマパーは、しかたなく自然写真家につきあってあげました。ほんとうはソーセージのほうが好きだけど、死骸に興味をもっているふりをしたり、二本足で立ってみせたり、手をふってあげたり、ポーズをとってあげたりしました。ウォーとうなったとたん、自然写真家はカメラを落としました。それで、今度は、タハマパーが自然写真家をカメラに収めました。タハマパーは満足してゆうゆうと立ち去り、友だちのみんなは歓声をあげました。

動物たちから見た人間のふるまいに、あるいは、友だちとのつきあい方に、「自由」をあらためて捉えなおす一冊です。

同書は、やさしい文庫シリーズ「黄色いくちばし文庫」の一冊で、小学校に上がる前の子どもたちが対象です。『おおきいくまのタハマパー』の続編に、『おおきいくまのタハマパー いえをたてる』(2008)があります。

【抜粋訳:pp.15-20】

 おおきいくまのタハマパーは考えました。
 友だちにはなったけれど、友だちはなにをするのか、タハマパーは知りませんでした。
「友だちはおいしいものをあげるの」りすのタンッピが言いました。
「食べものってこと?」タハマパーが聞きました。
「あたり!友だちは、おいしい松ぼっくりをあげるの」
「ぼくは、松ぼっくりもってないや」タハマパーはがっかりしました。
「友だちはおいしい牛乳をあげるんだよ」はりねずみのヴェイッコが言いました。
「ぼくは、牛乳もってないや」
「友だちは、おいしい塩をあげるのさ」へらじかのイーロが言いました。
「ぼくは、塩もってないや」
 タハマパーはかなしくなりました。もっているのは、ジャムとハチミツです。それが、タハマパーの"おいしいもの"なのです。
「松ぼっくりを食べなくても、友だちでいられるの?」タンッピが聞きました。
「考えよう」タハマパーはうーんとうなりました。みんなもうーんと考えました。それでも、みんなは友だちだと思いました。
「ぼくたちは、みんな食べるものがちがうね」タハマパーが言いました。
「でも、友だち」タンッピ、ヴェイッコ、イーロが言いました。
「遊びかたもちがうね」
「でも、友だち」
「歌う歌もちがうね」
「でも、友だち」
「角がある子もいるし、歯がある子もいるね」タハマパーが考えぶかげに言いました。
「でも、友だち!」タンッピ、ヴェイッコ、イーロが大きな声で言いました。
「針をもってる子もいるし、毛のある子もいるね」
「でも、友だち!」
「ひづめのある子もいるし、つめのある子もいるね」
「でも、友だち!」
 タンッピ、ヴェイッコ、イーロは、タハマパーの家で、ぴょんぴょん跳びはねたり、おどったりしました。タハマパーはぽりぽり耳をかきながら、友だちはなにをするのか、まだ考えていました。そして、はっと思いつきました。
「友だちは、ほかの友だちといっしょにいるんだ」
「そして、うれしくてジャンプする!」
「友だちは、友だちなんだ」
「そして、うれしくておどるの!」
「友だちといると、ほっとするんだ」
 そうして、みんなはいっしょにいて、ほっとしました。タハマパーは、はあっとあくびをして、目をとじました。タンッピとヴェイッコとイーロはまだはしゃいでいました。

文/訳 末延弘子 ハンネレ・フオヴィ著『おおきいくまのタハマパー いえをたてる』(2008)より


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