KIRJOJEN PUUTARHA
フィンランド文学情報サイト

 

 tunnus おすすめ作品

Vladimirin kirja    原書名:  Jättityttö ja Pirhonen
 (大きな女の子と小さな男の子)
 作者名:  Hannele Huovi, 1949~
 ハンネレ・フオヴィ
 出版社 / 年:  TAMMI / 2011
 ページ数:  32
 ISBN:  978-951-31-5852-1
 分類:  絵本
 備考:  Ihme juttu!
 Vladimirin kirja
 Urpo ja Turpo Villissä lännessä
 Ahaa! sanoi Pikkuruu
 Karvakorvan runopurkki
 Taivaanpojan verkko
 Miinalan Veikon nyrkkeilykoulu
 Suurkontio Tahmapää
 Suurkontio Tahmapää rakentaa
 Gepardi katsoo peiliin
 Vauvan vaaka
 Maailman paras napa
 Matka joulun taloon
 Höyhenketju
 『羽根の鎖』

【要約】

あるところに大きな女の子がおりました。空と大地のあいだをうめるほど大きく、足跡は湖になり、涙は川になり、ちょっと手を動かすと気流が乱れるほどでした。大きな女の子は穏やかで人恋しく、小さな花や虫をルーペで見るのが好きでした。ただ、あまりに大きくて誰も気づいてくれません。大きな女の子は、自分のことに気づいてほしくて町に出ました。ところが、町は足の踏み場がなく、うっかりすると車や人を踏み潰しかねません。大きいことは生きづらいと思った大きな女の子は、ふたたび森に帰りました。

そんな大きな女の子を、小さな男の子が森で見かけました。もともと、星や惑星や月といった大きなことが好きだった小さな男の子は、もう一度大きな女の子に会いたくて望遠鏡で昼も夜も空を見つめました。

大きな女の子はひとりぼっちで寂しくて泣いていました。小さな男の子は、大きな女の子の足もとまで来ると、気づいてもらいたくて大きな女の子の足の上で踊りはじめます。くすぐったさにようやく気づいた大きな女の子は、小さな男の子を手の平に載せて、二人は見つめ合いました。

「ぼくは大きな女の子にあこがれていました」
「わたしは小さなものこそいちばん美しいと思っていました」
 そうして二人は友だちになり、一緒に過ごしました。
 おたがいの中の大きな存在にあたたかく寄り添う物語です。

【抜粋訳】

 小さな男の子は庭に寝そべって空をあおぐと、望遠鏡をのぞきました。もういちど、夢のような大きな女の子を見てみたかったのです。
 小さな男の子は、体は小さいけれど、大きいものをこわがりませんでした。星や、惑星や、地球をまわっている月のことを考えるのは楽しいことでした。目のまえに大きな女の子が現れたことは、今までの人生の中で、いちばん大きな経験でした。
「すごいや!巨人ってほんとうにいるんだ」
 小さな男の子の胸ははずみました。
(あきらめないで見ていれば、もういちど会える)
 小さな男の子は望遠鏡をじっとのぞきこみました。
「世界には、夢かもしれないと思っていることが、まだたくさんあるはずだ」
 小さな男の子は目をこらしました。

文/訳 末延弘子 ハンネレ・フオヴィ著『大きな女の子と小さな男の子』(2011)より


おすすめ作品の目次へ ▲このページのトップへもどる