【要約】
猫のマウと犬のバウの空色の家は、空と森をわかつ丘の上にありました。ところが、昨年のクリスマスプレゼント事件で家は丘をすべり落ち、数ヶ月かけてようやく丘の中腹まで持ち直しました。春めく四月、雪はついに解け、家は斜めに傾いたまま動かせなくなりました。このまま冬が来るのを待つか、家を解体して丘の上に組み立てなおすほか手はありません。雪はとうぶん降らないでしょうし、組み立てなおすにも、マウが手伝わないことを考慮に入れるとひと夏かかってしまうでしょう。
マウは、こんな斜めの暮らしに耐えきれず、むりやり春を止めることにしました。しぶる仲間たちに協力してもらって、太陽をだますことにしたのです。バウは厚着をし、ロバのオインクヴィストは落葉を掻き集めるふりをし、ウシのムーッコネンは農具にカバーをかけ、ヤギのカカティンはきのこ狩りに出かけました。けれども、自然の摂理には逆らえず、皆、上着を脱いで、春の作業に取りかかりました。それでもあきらめきれないマウは、バウに家の解体を急かします。誰かが加勢してくれれば仕事もはかどると言うバウに、マウは村の仲間に声をかけて回ります。けれども、猫の手も借りたいくらい忙しいと断られます。マウは皆に家の解体作業を手伝ってもらいたいばかりに、バウを皆の加勢に行かせます。自分だけが必死になって働いていることに割り切れなさと憤りを感じたバウは、手伝うのを止めました。
さすがのマウも自分も何かしなくては悪いと思い、選りすぐりの自分の肖像画を手放すことにしました。マウは、売ったお金で助っ人を雇って、アトリエと塔のついた大きな家を建てたいと夢見ていました。本当は自分の腕に自信はなかったのですが、バウには自分の絵は価値があって高く売れると大きく言っていました。マウがかたくなに肖像画を梱包したまま町の市場で売る様子を、バウはおかしいと思いながらもマウの言葉を信じました。たとえ金持ちのヘラジカ夫人に見せてほしいと言われても見せることはなく、けっきょく絵は一枚も売れませんでした。
バウはこつこつと解体作業をつづけました。マウの塔は、家の設計の見直しや資材不足のために見送られました。それでもマウは塔をあきらめきれず、バウが同じ場所に同じ家を建てている隙に、ベランダの板をこっそり使って自分だけの塔を建てました。それは窓も屋根もない櫓のような塔でした。
バウは秋になる前にベランダを残して家を完成させますが、マウは意地を張ってもどりませんでした。秋の夜は凍えるように寒く、バウはマウのことが心配でたまらず、眠れなくなりました。マウも寒さと寂しさに耐えかね、暖をとりに家にもどってきました。そして、二人は残ったベランダをいっしょに立て直し、家が完成しました。
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