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Maukka, Väykkä ja mieleton lumipallo    原書名:  Maukka, Väykkä ja mieleton lumipallo
 (マウとバウの物語② 大きなクリスマスプレゼント)
 作者名:  Timo Parvela, 1964~
 ティモ・パルヴェラ
 出版社 / 年:  Tammi / 2009
 ページ数:  148
 ISBN:  9789513149550
 分類:  児童書
 備考:  Maukka ja Väykkä rakentavat talon
 Maukka ja Väykkä
 Onnenpyörä
 Hilma ja täydellinen lemmikki / Hilma ja hyvä harrastus
 Karuselli
 Ella ja kaverit 1-3
 Keinulauta
 Ella aalloilla
 Sanoo isä

【要約】

 猫のマウと犬のバウは、空と森をわかつ丘の上の空色の家に住んでいます。気まぐれなロマンチストのマウのために、バウはクリスマスプレゼントを用意しました。ベニヤ板をつなぎ合わせてつくった、それはそれは大きな雪玉アドベントカレンダーでした。マウは喜んで、さっそく1日目の窓をこじ開けました。そこには斧が入っていました。喜んだのもつかのま、しっかりと固定されていなかった雪玉が丘を転がりはじめたのです。雪玉は、ニワトリのフォン・ゴットの納屋を潰し、ウシのムーッコネンのベランダを壊し、アヒルのクヴァークの温室やポッス婦人の煙突を倒して、湖に沈んでしまいました。

マウはプレゼントを失ったことを悲しみ、バウは村の皆に迷惑をかけてしまったことに落ちこみ、村の皆はとつぜんの天災に言葉を失いました。バウが壊れた家屋の修理にいそしむ一方で、マウは家々でお茶をごちそうになりながら、自分へのクリスマスプレゼントが湖の底に沈んでしまった悲しみをくりかえし語って、同情をあおります。天災だと思いこんだ村の皆は、必死になって復旧に努めるバウとマウに感謝して、皆で協力して湖に沈んだ雪玉アドベントカレンダーを引き揚げました。

 引き揚げた雪玉には、バウからマウへ宛てたクリスマスメッセージがついていました。村の皆は唖然とし、これは天罰でもなんでもなくバウとマウのせいだということに気づきます。バウは罪悪感にさいなまれ、村から出ていくことを決意しました。クリスマスを取りやめることをマウに伝え、家ごと引っ越せるように、巨大なスキー板を作りました。一方、マウはクリスマスもクリスマスプレゼントもあきらめきれず、あることを思いつきました。

 それは、小人に扮して、雪玉はサンタクロースからマウへの贈り物だということを皆に信じこませることでした。雪玉はふたたび湖から引き揚げられ、ウシのムーッコネンやウマのイハライネンやロバのオインクヴィストを先頭に、丘の上へ運ぶことになりました。ところが、途中で小人の正体に気づいた皆は、あきれて踵を返します。

 バウは恥ずかしさのあまり引っ越しの決意をいっそう固めました。旗竿をマストに掲げ、マウが作ったクリスマスカーテンを帆に張って、クリスマスイブを明日に控えた吹雪の晩に、いよいよ出発します。ところが、巨大なスキー板が庭に置きわすれたマウの斧に引っかかり、舵をとられた家は村めがけて滑りだしました。村では、どの家もクリスマスをあきらめていました。クリスマスの支度も整わず、寒風が貫く家の中でとても寂しく寒い思いをしていました。そんな中、スキー板に乗ってやってきた二人の家は、思いがけず歓迎されました。家の中は暖かく、クリスマスの飾りとごちそうで溢れ、皆は喜びました。バウは小人に扮して、バウとマウ以外の皆にプレゼントを配りました。マウも反省し、それでいいと思いました。バウはマウに夜空をプレゼントして、許してあげました。

【抜粋訳: pp. 145-149】

 荒れくるう吹雪のなかから明かりが見えました。赤い帯のような、緑の点のような、白い滴のようなものが、やがて赤い帆をかかげたヨットになり、ついにマウとバウの家となってあらわれました。雪の幕のむこうから堂々とすべってくると、屋根のうえで身を寄せあっている皆の前でとまりました。皆は寒さでこわばった体をどうにか動かして、緊張した様子のマウとバウに出迎えられて中に入りました。
「どうもありがとう」ウマのイハライネンが言いました。
 夜になって吹雪がおさまりました。村を見わたすと、どこまでも美しい一面の銀世界で、煙突や旗竿や梢がようやく見えるほど、どの家も厚い雪に覆われていました。マウとバウの家は巨大なスキー板をつけて村の真ん中に立っています。
 マウがせっせとクリスマスの準備をしていたおかげで、家中はクリスマス一色で、料理もたっぷりありました。足りないのはプレゼントだけでしたが、救われた幸せのほうが大きく、クリスマスの歌やおしゃべりや笑い声が絶えず響きわたりました。
 夜が更けるにつれ、バウはあまりしゃべらなくなりました。そして、これからクリスマスの食事が始まるというときに姿を消しました。しばらくして、玄関先に大きなクリスマスの袋をかついだ小人があらわれました。小人は、灰色のズボンをはいて、赤い上着をはおり、赤い三角帽をかぶって、もこもこした髭をたくわえています。
「メリークリスマス!」
 小人は大きな声で挨拶すると、マウとバウをのぞいて、皆にプレゼントを配りました。プレゼントはぜんぶで23個ありました。
 クリスマスパーティはこのうえなく盛りあがり、小人は立ち去りました。やがて家にもどってきたバウは、皆の喜ぶ声をうれしそうに聞きながら、じっと立ちつくすマウをちらちらと見ていました。
「マウ、ちょっと星空でも見ない?すごくきれいだよ」バウはマウを外に誘いました。
「カレンダーの窓は空っぽだったよ。バウは入れわすれちゃったの?」マウがしずかに口を開きました。
「うん、屋根裏に置きわすれたんだ」
「ぼくの斧は?」
「あわてちゃって、取りにいけなかった」
「いいの。でも、今までで最高のプレゼントだった。だって、クリスマスを救ってくれたし、こんなふうに村を救ってくれたんだもん」
「うん、ほんとに。じつはね、マウにもう一つプレゼントがあるんだ。斧よりもっと大きいよ」
「えっ、ほんと?」マウの目がぱっと輝きました。
「マウを許してあげる」
 マウは星を見あげました。そして世界でいちばん幸せだと思いました。
「メリークリスマス。だれにってわけじゃなくて、みんなに」
「うん、メリークリスマス」

文/訳 末延弘子 ティモ・パルヴェラ著『大きなクリスマスプレゼント』(2009)より


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