【要約】
小さなくまのピーにはアルゴンという友だちがいます。ある風の強い日、リンゴの木の下で二人はリンゴを眺めていました。けれどもリンゴはたった一つしかありません。風はどちらへリンゴを落としてくれるのか、ピーは考えました。ところが、アルゴンは、どちらにリンゴが落とされてもピーにあげるつもりでした。なぜなら、ピーがリンゴを好きなことを知っていたからです。
「リンゴはピーにあげようと思ってたんだ。だって、ピーはリンゴがぼくよりも好きだろ?どう?おいしい?」
「うん」
「よかった。だったら、ぼくは幸せだ」
カモメになれなかったカモメ鳥は、岩の上で椅子に座ってカモメの群れを眺めていました。すると、波に揺られて流されているボトルメールを発見します。それは、飛べないサギの小さなウンニが、南に渡った友だちの大きなオンニに宛てた手紙でした。
「オンニ、かえってきて!ぼくね、たいせつな話があるの。ウンニより」
カモメ鳥はサギの大きなオンニを知っていました。そこで小さなウンニのためにボトルメールを届けようと決心します。ピーとアルゴンはシーソーを漕ぎながら、ひとり寂しく大きなオンニを待ち続ける小さなウンニをかわいそうに思いました。ピーは、かつてアルゴンからもらった幸運の石をあげると、小さなウンニはこうつぶやきます。
「でもね、せつなくなればなるほど、幸せな気持ちになるの」
そのとき、カモメ鳥がカモメの力を借りて大きなオンニを連れてやってきました。小さなウンニと大きなオンニは再会し、ウンニはたいせつな話を打ち明けました。それは、オンニと南へ飛び立つことでした。でも、ウンニは飛べません。カモメ鳥の空飛ぶ椅子に乗り、サギの力を借りて、ウンニはオンニと旅立ちました。
本書は、ティモ・パルヴェラの哲学的思索に富んだ三部作の最終巻です。友情と孤独について小さなくまのピーは第一弾『シーソー(Keinulauta)』(2006)で語り、続く第二弾『Karuselli(メリーゴーランド)』(2008)では飛べないサギの小さなウンニが大きな時間と成長を経験し、第三弾ではピーやウンニが幸せについて考えます。
幸せは、他の人の幸せを通じてこそ幸せになれる、そんなことを知る一冊です。
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