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Ella aalloilla    原書名:  ELLA AALLOILLA
 (エッラのゆかいな航海記)
 作者名:  Timo Parvela, 1964~
 ティモ・パルヴェラ
 出版社 / 年:  TAMMI / 2005
 ページ数:  138
 ISBN:  9513134377
 分類:  児童小説
 備考:  Maukka ja Väykkä rakentavat talon
 Maukka, Väykkä ja mieleton lumipallo
 Onnenpyörä
 Hilma ja täydellinen lemmikki / Hilma ja hyvä harrastus
 Karuselli
 Maukka ja Väykkä
 Ella ja kaverit 1-3
 Keinulauta
 Sanoo isä

【要約】

小学二年生のエッラは掛け算が苦手な女の子。クラスのみんなも九九を覚えきれないので、先生と一緒にもう一度二年生になりました。新学期を控えた夏休みに、先生や仲間たちと航海することになりました。春に知り合ったロックスターのエルヴィーラから船を借りて、キャンプ地の島を目指して、さあ出発。

エッラのほかに、ものしりトゥーッカ、へりくつプカリ、お母さんっ子サンッパ、ロックンロールなパテ、平凡だけどあなどれないティーナ、物おじしないハンナといったクラスの仲間たち、そして、みんなが大好きな先生に、なぜか険しい顔つきの小柄な女性の案内人も同船しました。厳しそうな案内人は、率先して舵をとり、いろいろと口うるさく命令し、先生は浮かない表情をしています。というのも、先生は秋の新学期から、念願だった航海学校の校長先生として赴任することが決まり、この案内人の女性は後任の先生だったのです。

エッラとエッラの仲間たちは、どうしても先生と同じ学校に入りたくて、みんなで知恵を絞ってじぶんたちが優秀な乗組員であることを先生にアピールすることになりました。ところが、救助ロープの結び方を披露しようとするものの、ロープが絡み合って先生の手を借りることになったり、救命訓練で先生を助けようと思ったら、逆に海難救助隊を呼ぶ騒ぎになったりと、なかなか思うようにいきません。

先生の意志は固く、エッラたちは悲しみに暮れながら、帰路に着きます。ところが、嵐に見舞われて船は沈没し、命からがら無人島へ漂流しました。はたして、エッラたちは無事に帰ることができるのでしょうか?そして、大好きな先生の気持ちは動いたのでしょうか?

児童作家ティモ・パルヴェラのエッラとエッラの仲間たちが繰り広げる愉快なおはなし第10弾。2005年には、『エッラとエッラの仲間たち―パテのロックンロール(Ella ja Paterock)』(2004)で、プラッタ賞を受賞しました。

【抜粋訳:pp.22-24】

「さあ、釣り糸を投げなさい」と、案内人が命令しました。

もちろん、みんな投げました。トゥーッカは、わたしたちのなかでもいちばん遠くまで投げました。10メートルくらいは飛びました。わたしとハンナは7メートルで、ティーナは6メートルでした。プカリは投げるそぶりすらみせません。投げることになるなら、みんなを浮きにぶん投げてやると、おどしています。サンッパの投げた釣り糸は、海までとどかずに、案内人の背中にぶつかりました。ちょうど、そのとき、パテの釣り針に最初の魚が引っかかりました。

魚はとてもおかしなかたちをしていました。靴底みたいにぺちゃんこで、ぎろりとにらみをきかせています。

「パンクしてる。どうやって空気を入れたらいい?」と、パテが傷ついた様子で案内人に聞きました。

「それはヒラメです。ですから、ぺちゃんこでいいんです」と、案内人はおっくうそうに答えました。

「うそだ。パンクしたんだ」と、パテが言いました。

もちろん、わたしたちも案内人の言ったことが信じられなかったので、先生に聞きに行きました。

「パンクしちゃったね。釣り針で穴が空いちゃったんだ。釣り針をつけずに釣りをすれば、ぷっくり丸いヒラメがとれるんだよ」と、先生は説明すると、魚をやさしく海に帰しました。すると、魚は身をひるがえすようにすいっと泳いで、石の陰にかくれました。

「この子のお母さんが穴を埋めて、また空気を入れ直してくれるよ」と、先生はパテをはげましました。パテは、ヒラメの運命がちょっと気になっていたからです。

(・・・)

「子どもたちに童話を語るなんて、わたしは同意しません。ありのままの事実こそが精神をきたえるのです。子どもはつらい現実であってもそのまま受け入れるべきです」と、案内人が先生に言いました。

「ぼくはその反対で、童話が大好きなんです。童話がなかったら、直球勝負の子どもたちやつらい現実には耐えきれないな」と、先生は言いました。

文/訳 末延弘子 ティモ・パルヴェラ著『エッラのゆかいな航海記』(2005)より


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