【要約】
回らないメリーゴーランドがありました。木製のライオンやキリンやシマウマやゾウは微動だにせずに乗り手を待っています。小鳥のウンニはあまりに小さくて木馬に乗れません。はやく大きくなって、木馬に乗って、回らないメリーゴーランドを動かしたい、小さなウンニは思いました。木馬を見上げる小さなウンニに、サギのオンニが声をかけました。小さなウンニと大きなオンニは体の大きさは違うけれど、二人とも同じものを待っていました。時間です。小さなウンニは成長の時を、大きなオンニは南に渡る季節を待っていました。
小さなウンニは壊れているメリーゴーランドをどうしても直したくて、南に渡らないことに決めました。そして、大きなオンニもいっしょに残ることにしました。このメリーゴーランドは作った人にしか直せないと知った小さなウンニは、作った人のいるアフリカまで運ぼうとします。しかし、メリーゴーランドはびくとも動きません。でも、小さなウンニはあきらめずに、松ぼっくりの種を植えました。種がやがて大きな木に成長して、メリーゴーランドを持ちあげてくれれば、アフリカまで転がして持っていけると思ったのです。
ただ、木の時間はウンニやオンニの時間と違います。生きているものは皆、それぞれ時間は違うのです。雪が降り、小さなウンニと大きなオンニは寄り添いあって寒さを凌ぎ、スキーや雪合戦をして冬を過ごしました。夏が来ても、メリーゴーランドは変わらず動きません。サギの仲間たちが南から帰ってくると、小さなウンニは大きなオンニの抗いがたい旅立ちを思います。友の南への出発を、小さなウンニは受け入れました。
季節は巡り、小さなウンニは木馬に乗れるまでになりました。メリーゴーランドはいっこうに回りません。でも、木馬から何本もの苗が見えました。小さなウンニが蒔いた種が芽を出したのです。時が経ち、苗木は大人の木へ成長し、ついにメリーゴーランドを持ちあげました。
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