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Karuselli    原書名:  Karuselli
 (メリーゴーランド)
 作者名:  Timo Parvela, 1964~
 ティモ・パルヴェラ
 出版社 / 年:  Tammi / 2009
 ページ数:  67
 ISBN:  9789510342671
 分類:  児童書
 備考:  Maukka ja Väykkä rakentavat talon
 Maukka, Väykkä ja mieleton lumipallo
 Onnenpyörä
 Hilma ja täydellinen lemmikki / Hilma ja hyvä harrastus
 Maukka ja Väykkä
 Ella ja kaverit 1-3
 Keinulauta
 Ella aalloilla
 Sanoo isä

【要約】

回らないメリーゴーランドがありました。木製のライオンやキリンやシマウマやゾウは微動だにせずに乗り手を待っています。小鳥のウンニはあまりに小さくて木馬に乗れません。はやく大きくなって、木馬に乗って、回らないメリーゴーランドを動かしたい、小さなウンニは思いました。木馬を見上げる小さなウンニに、サギのオンニが声をかけました。小さなウンニと大きなオンニは体の大きさは違うけれど、二人とも同じものを待っていました。時間です。小さなウンニは成長の時を、大きなオンニは南に渡る季節を待っていました。

小さなウンニは壊れているメリーゴーランドをどうしても直したくて、南に渡らないことに決めました。そして、大きなオンニもいっしょに残ることにしました。このメリーゴーランドは作った人にしか直せないと知った小さなウンニは、作った人のいるアフリカまで運ぼうとします。しかし、メリーゴーランドはびくとも動きません。でも、小さなウンニはあきらめずに、松ぼっくりの種を植えました。種がやがて大きな木に成長して、メリーゴーランドを持ちあげてくれれば、アフリカまで転がして持っていけると思ったのです。

ただ、木の時間はウンニやオンニの時間と違います。生きているものは皆、それぞれ時間は違うのです。雪が降り、小さなウンニと大きなオンニは寄り添いあって寒さを凌ぎ、スキーや雪合戦をして冬を過ごしました。夏が来ても、メリーゴーランドは変わらず動きません。サギの仲間たちが南から帰ってくると、小さなウンニは大きなオンニの抗いがたい旅立ちを思います。友の南への出発を、小さなウンニは受け入れました。

季節は巡り、小さなウンニは木馬に乗れるまでになりました。メリーゴーランドはいっこうに回りません。でも、木馬から何本もの苗が見えました。小さなウンニが蒔いた種が芽を出したのです。時が経ち、苗木は大人の木へ成長し、ついにメリーゴーランドを持ちあげました。

【抜粋訳: pp. 31-33】

「このなかには種があるんだ。松ぼっくりより小さい。でも、木馬のキリンよりも大きくて、ゾウよりも強い木になるよ。そうなるまでには時間もうんとかかる。でも、だからこそ強いんだ。木がメリーゴーランドを持ちあげて、ぼくはアフリカまで転がすよ。直してもらうためにね」小さなウンニが言いました。
「時間はうんとかかるよ」大きなオンニが言いました。
「だいじょうぶ。ぼくは待てる」小さなウンニはその場に座りこみました。
 大きなオンニは空を見上げました。雪がひとひら、オンニの長いくちばしに舞いおりました。
 木には木の時間があります。木にとって一秒はたいしたことはありません。一分だってそうです。一日たってもなにも起こりません。一週間でようやく息をつき、一ヶ月で二回呼吸して、一年たって服を着替えるのです。一分待ってもなにも起こらない松ぼっくりに、小さなウンニは声をあげました。
「なんにも起こらない!バカバカバカ!」小さなウンニは松ぼっくりをけりました。松ぼっくりは砂浜に飛びちりました。

文/訳 末延弘子 ティモ・パルヴェラ著『メリーゴーランド』(2009)より


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