【要約】
ラウハおばさんと暮らしているリストにはお父さんがいません。お母さんは世界をまたにかけて活躍する研究者で、お父さんはリストが小さいころに交通事故で亡くなりました。でも、リストはあたらしいお父さんがほしいとは思っていません。ところが、ラウハおばさんの誕生日にケーキ作りに腕を振るうリストを見て、頭の固い親戚のエルヴィおばさんは、男の子らしくない、と嘆きます。男の子というのはスポーツでもして外で遊ぶものなのに、リストは女の子のように家でお菓子を作っています。こうなったのは女性に囲まれて育ったせいだ、とエルヴィおばさんが言いだしました。
そこで、ラウハおばさんは、リストのお父さんにふさわしいスポーツマンタイプの父親モデルを新聞で募集します。翌日から父親モデルの面接が始まりましたが、なかなかピンとくる候補者はいません。リストはスポーツよりもドラムを叩いたりお菓子をつくったりするほうが好きだとなんども言うのですが、ラウハおばさんは聞く耳をもちません。リストのことやラウハおばさんの浮かれ具合を案じたミスター・リンドベリは、自ら変装して父親モデル候補に名乗りでました。
レンヌ・レフムスマキと名乗ったミスター・リンドベリはグローブにヘルメットをつけて、リストをアイスホッケーに魚釣りにと、外へ連れだします。リストには自分がミスター・リンドベリだということを打ち明けましたが、やがて二人の行動を不審に思ったエルヴィおばさんやネッリにも正体を明かして事情を話します。
ミスター・リンドベリは若いころ、アイスホッケーをしていました。でも、自分にむいていないことに気づいてやめました。それよりも、切手収集のほうが楽しく、自分らしくなれます。これをラウハおばさんに伝えたいのですが、自分を偽ってスポーツマンのレンヌとなってしまった手前、後に引けなくなってしまいました。ラウハおばさんを傷つけないためにレンヌになったりミスター・リンドベリになったりする二重生活が、しだいに苦しくなってきます。
ラウハおばさんは、知的なスポーツマンのレンヌにぜひとも父親モデルをこのままやってほしいと願い、町の親子大会にレンヌとリストを出場させます。競技種目はみのむし競走です。父親は麻袋に入って跳びはねながらゴールを目指し、子どもは父親の後について声援を送ります。エルヴィおばさんのアイデアで、レンヌことミスター・リンドベリはゴールテープを切って表彰台に立たずにそのまま姿を消しました。
レンヌの置き手紙には、リストはもう一人前の男の子になったので自分の役目は終わった、と書いてありました。レンヌのことを名残惜しく思いながら、皆はフレンチトーストパーティを開きます。エルヴィおばさんは、あまりによくできたリストのフレンチトーストに舌鼓を打ち、男の子らしくない、と言った発言を撤回します。男の子だってお菓子作りが趣味でもいいのです。自分が自分らしくいられる自由は、正直であることと共感することなのかもしれません。
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