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Risto Räppääjä ja kuuluisa Kamilla    原書名:  Risto Räppääjä ja kuuluisa Kamilla
 リストとゆかいなラウハおばさんシリーズ10
 ちびっこスター、カミッラを救えの巻
 作者名:  Sinikka Nopola, 1953~ & Tiina Nopola, 1955~
 シニッカ・ノポラ&ティーナ・ノポラ
 出版社 / 年:  TAMMI / 2009
 ページ数:  104
 ISBN:  9789513149987
 分類:  児童小説
 備考:  Risto Räppääjä saa isän
 Heinähattu, Vilttitossu ja kielletty kampela
 Heinähattu ja Vilttitossu joulun jäljillä
 Heinähattu, ja Rubensin veljekset
 麦わら帽子のヘイナとフェルト靴のトッス ―なぞのいたずら犯人―
 トルスティは名探偵 ヘイナとトッスの物語2
 へイナとトッスのクリスマス―フィンランドからのおたより―
 へイナとトッスからの手紙―講談社 青い鳥文庫

【要約】

学校がスキー休暇に入った2月、リストのガールフレンドのネッリは田舎に帰り、リストはひとり退屈を持てあましていました。そこで、ラウハおばさんは、リストと同い年の子どもをもつ友人を電話帳で探してみたのですが、リストは「ネッリがいい」と言って聞きません。暇つぶしにテレビをつけると、全国ちびっこのど自慢の決勝の切符を手にした天才子ども歌手カミッラが映っていました。インタビューに答えていたのはラウハおばさんの旧友、カミッラの母ビルギッタと父パシ=ペッカでした。

ラウハおばさんは有名人の友だちを持ったことに舞いあがり、さっそくファイナル出場のお祝いの電話をかけます。すると、ビルギッタから一日だけカミッラをあずかってほしいと頼まれます。どうやらカミッラは、ライバルのヴェロニカの歌の先生ロサムンダと妹で譜めくりのマチルダに狙われているというのです。カミッラが安心して歌の練習ができるように、ラウハおばさんはリストの部屋にかくまうことにしました。

髪をおだんごにきゅっと縛り、背筋をぴんと伸ばした、歌ひとすじに育てられた有名人カミッラの世話に、ラウハおばさんは奮起します。人目にさらされないように気をつけていたものの、カミッラはうっかりミスター・リンドベリに目撃され、テレビの立入検査員だと名乗る不審な髭づらの男に歌声を聞かれ、譜面まで盗まれてしまいます。ついには、カミッラは行方不明になり、リストとラウハおばさんはミスター・リンドベリとネッリに相談することになりました。

カミッラは、怪しい髭づらの二人の男にさらわれて、マンションの地下室に閉じこめられていました。必死の捜索の末、カミッラを救出したリストとネッリは、ファイナルの会場に急ぎます。髭づらの二人の男を追っていたラウハおばさんとミスター・リンドベリも、同じ会場にたどり着きました。この二人の男は扮装したロサムンダとマチルダだったのです。かつて、リコーダーコンクールのファイナルに勝ち進みつつも、あやまって食料庫に閉じこめられて出場できなかったロサムンダは、どうしても優勝を味わいたかったのでした。

このロサムンダの行き過ぎた行動や姉の言いなりになっている自分が嫌でたまらなかった妹のマチルダは、譜めくりをストライキしました。マチルダは、コンクール終了間際に滑りこんだリストとネッリとカミッラのピアノ伴奏を担当し、リストの即興ラップに合わせてネッリは踊り、カミッラは髪をふり乱して歌い、ヴェロニカも加わって、この四人組が優勝しました。

カミッラはロサムンダとマチルダのことを許し、ありのままの普通の女の子にもどりました。自分らしくあるということは、有名人になることではなく、自分の楽しいを見つけることなのです。

【抜粋訳:pp.71-72】

「ああ、わたしったら、どうして買い物になんか行ったのかしら。いっときも目を離すべきじゃなかったのよ!もうすぐコンクールが始まっちゃうわ!ネッリ、あなたがカミッラの代わりに今夜の決勝に出て」ラウハおばさんが言いました。
「でも、わたしは歌手じゃないわ」ネッリが言いました。
「あらそうね。だったら、どうすればいいのかしら」
「どうもこうもないよ。カミッラを見つけ出すんだ」ミスター・リンドベリがまじめに言いました。
「コンクールの譜面までどこかに行っちゃったのよ」
 ラウハおばさんが泣きそうな声を出すと、リストはテーブルをトントンとたたきながら言いました。
「このまえ来た立ち入り検査の人が、紙みたいなものをポケットに入れてたよ」
「それって、カミッラの譜面じゃないの?」ネッリが言いました。
 ミスター・リンドベリはわかったといったふうに指をピンと立てました。
「そいつが譜面を盗んだんだ!しかし、カミッラを見つけることが先決だ。そのあやしい男はまたもどってきてカミッラを連れだしかねないからね」
「そんなことさせないわ!」ラウハおばさんは一声あげて、台所からフライパンを持ってきました。
「きみはそれでなにをするつもりだい?」
「どろぼうを退治するのよ」
「ちょっとやりすぎじゃないかい?フライパンは家に置いていこう」
「イヤよ」
「しかたないな。それじゃあ、ラウハは駐輪場を調べてくれ。わたしは屋根裏を見てみよう。リストとネッリは地下室を探ってくれるかい?念のために懐中電灯をわたしておこう」

文/訳 末延弘子 シニッカ・ノポラ&ティーナ・ノポラ著『リストとゆかいなラウハおばさんシリーズ10 ちびっこスター、カミッラを救えの巻』(2009)より


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