フィンランドを代表するMelodic death metalバンドAmorphisがアルバム「eclipse」(2006)をリリースしました。このアルバムの歌詞は、Paavo Haavikkoの劇作『Kullervon tarina』(クッレルヴォの物語, 1982,1989)に基づいています。
アルバムのリリースが今年のはじめでしたので時期的に遅れてしまいましたが、『Kullervon tarina』のあらすじを辿りながら、各曲の背景について大まかに綴ってみます。日本にもたくさんAmorphisのファンがおられると思います。多少なりともご参考になれば幸いです。 |
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さて、『Kullervon tarina』(クッレルヴォの物語, 1982, 1989)の主人公Kullervo(クッレルヴォ)とはいったいどのような人物でしょう?
フィンランドの民俗詩において「悪童の話」、「怪力の子の話」、「兄妹相姦」、「復讐の話」が語られています。それらの要素が組み合わさって誕生したのがKullervoです。このKullervoについては、国民叙事詩『Kalevala』(カレヴァラ, 1849)全50詩の中に6詩(第31詩から第36詩)収められています。
黄色い髪をしたKullervoの姿は印象的で、画家Akseli Gallen-Kallela(アクセリ・ガッレン=カッレラ, 1865-1931)の描いた「Kullervon kirous」(クッレルヴォの呪い, 1899)は有名です。その他に『Kanteletar』(カンテレタル, 1840)の記述や文豪Aleksi Kivi(アレクシス・キヴィ, 1834-1872)の劇作『Kullervo』、Jean Sibelius(ジャン・シベリウス, 1865-1957)の交響曲「Kullervo」(1892)でも親しまれています。
『Kalevala』においてKullervoは、「悪童」であり、彼のような存在を『Kalevala』に描くことで「教義的な道徳観」を植えつける目的があったと推測されます。 |