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Risto Räppääjä ja villi kone    原書名:  Risto Räppääjä ja villi kone
 (リスト・ラッパーヤと困ったパソコン)
 作者名:  Sinikka Nopola, 1953~ & Tiina Nopola, 1955~
 シニッカ・ノポラ&ティーナ・ノポラ
 出版社 / 年:  TAMMI / 2006
 ページ数:  112
 ISBN:  9513137325
 分類:  児童小説
 備考:  Risto Räppääjä ja viimeinen tötterö
 Miksi emme totu pystyasentoon
 Risto Räppääjä ja kauhea makkara
 Risto Räppääjä ja komea Kullervo
 Risto Räppääjä ja Hilpuri Tilli
 Risto Räppääjä ja sitkeä finni
 Risto Räppääjä ja Nuudelipää
 Risto Räppääjä ja pakastaja-Elvi
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【要約】

夏休みが始まったというのに、リストは部屋にこもりっきり。ドアに鍵をかけて、「協議中」という貼り紙までつけています。どうやら、パソコンのレスリングゲームに夢中になっているようです。ラウハおばさんは、なかから聞こえてくるカタカタという音に、てっきりリストが詩を書き始めたのだと勘違いし、ネッリは部屋に入れてくれないリストに愛想を尽かして、アイドル歌手のヴィッレに熱を入れ始めました。

リストのパソコン依存症は悪化するばかりで、髪はぼさぼさ、爪は伸び放題、歯は汚く黄ばんで、目の下にクマまでできました。見かねたラウハおばさんは、コードを引っこ抜いて、ミスター・リンドベリに預けるのですが、今度はミスター・リンドベリがパソコン依存症になってしまいます。

パソコンに夢中になっている間に失ったネッリとの友情を取り戻すべく、リストはネッリの憧れのアイドル歌手のヘアスタイルをまねてみたり、ラウハとミスター・リンドベリは、リストに代わって花とメッセージを贈ってみたり。ただ、どれもネッリの心をつかみません。失ってはじめて気づく大切なものを、リストは、はたして取り戻せたのでしょうか。

【抜粋訳: pp.62-64】

ラウハはフライパンから五枚目のフレンチトーストをリストの皿にうつして、ホイップクリームといちごジャムをたっぷりのせました。
「リンドベリ、あなたももう一枚たべる?」
ミスター・リンドベリはこくんとうなずいて、皿を差しだしました。パソコンにかじりついて青白かったふたりの顔に血が通ってきました。それを満足そうに見つめていたラウハが、安心したようにこう言いました。
「パソコンから解放されて、いい気分でしょ」
「そうだね。それはもう、おそろしい機械だったよ。じぶんを見失ってしまったんだからね」
「あなた、魔法をかけられたのよ。まるで、ターザンみたいだったわ!」
「きみを追いかけたりした?」
「屋根裏まで追いかけられたわ。こわかったんだから」
「ラウハ、ほんとうに申し訳ない。なにかおわびにできることはあるかな」
「あるわ。リストがネッリを取り返せるように、みんなで頭をひねるのよ。そうでしょ、リスト」
「うん、まあ」リストがぼそっと言いました。
「リストはネッリを失ったのかい?」リンドベリがびっくりしたように聞くと、ラウハはうなずきました。
「パソコンのせいで?」
「パソコンのせいよ」
「あんなにすばらしい友情が、たったひとつのパソコンのせいでだめになるなんて」リンドベリはいまだにふしぎがっています。
リストの胸はつまりました。
「代わりにネッリに話してあげようか」リンドベリがたずねました。
「いいよ!はずかしいよ」
「話してもむだよ。ネッリはヴィッレが気になっているんだもの」
「ヴィッレって?」
「アイドル歌手よ。ふわふわ巻き毛の男の子」
リストは手で耳をふさいぎました。
「その話は聞きたくない」リストはそう言って、じぶんの部屋にむかいました。
ラウハは、ソファに座っているミスター・リンドベリのとなりに腰をおろしました。
「ひらめいたわ!リストがネッリの窓の下まで行って、セレナードを歌ってあげればいいのよ」
「聞こえたよ!ぜったいに行かないね」リストが奥から叫んでいます。
リンドベリは声を落として、こう言いました。
「リストは、ネッリにふさわしい友だちだというところを、態度でしめさないといけないね」
「ええ、ほんとにそうだわ。たとえば、お花を贈らせるのはどう」
「わたしには考えがあるんだ。リストはきっといやがって花を渡さないと思う。でもね、カードにリストの名前を書いておけばいいんだ」
「レンナート、あなたって天才。さあ、花屋に急がなきゃ」ラウハがこっそり言いました。
ラウハは玄関先でリストに叫びました。
「リスト、行ってきます。ちょっとぶらぶら散歩してくるわ。ネッリのことは、心配しなくてだいじょうぶよ」

文/訳 末延弘子 シニッカ・ノポラ&ティーナ・ノポラ著『リスト・ラッパーヤと困ったパソコン』(2006)より


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