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Risto Räppääjä ja komea Kullervo    原書名:  Risto Räppääjä ja komea Kullervo
 (リスト・ラッパーヤとハンサムボーイのクッレルボ)
 作者名:  Sinikka Nopola, 1953~ & Tiina Nopola, 1955~
 シニッカ・ノポラ&ティーナ・ノポラ
 出版社 / 年:  TAMMI / 2002
 ページ数:  104
 ISBN:  9513125505
 分類:  児童小説
 備考:  Risto Räppääjä ja viimeinen tötterö
 Miksi emme totu pystyasentoon
 Risto Räppääjä ja villi kone
 Risto Räppääjä ja kauhea makkara
 Risto Räppääjä ja Hilpuri Tilli
 Risto Räppääjä ja sitkeä finni
 Risto Räppääjä ja Nuudelipää
 Risto Räppääjä ja pakastaja-Elvi
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【要約】

リストが住んでいる家の向かいにぴしっと着こなしたハンサムボーイのクッレルボがやってきました。未亡人となって元気がなくなった祖父アイモ・カケスを心配して、夏休みの間だけ同居するようです。しかも、クッレルボは、祖父に話し相手のパートナーを探すために、目を皿のようにして分厚い電話帳から未亡人の名前を探しています。パートナーさえ見つかれば、アイモは老人ホームに行かなくてすむからです。容姿も振る舞いも文句のつけどころのないクッレルボに、ラウハおばさんとネッリは浮き足だっています。しかも、クッレルボの名字に貴族の証である敬称"フォン"がついていると勘違いしたラウハおばさんは、もっと仲よくなりたいとパーティーを開きます。そんなみんなの空騒ぎを面白くないと思っているリストはいたずらしようと考えますが、失敗に終わって自己嫌悪に陥る始末。ところが、完璧そうにみえるクッレルボにも苦手なものがあったのです。ぬるい水に潜むバクテリア、賞味期限ぎりぎりの牛乳、洋服についたシミ。徹底した潔癖性や恐怖症からクッレルボはどうやって解放されるのでしょうか。そして、アイモのパートナーにエルヴィおばさんが選ばれた理由は?「リスト・ラッパーヤ」シリーズ第5弾。

【抜粋訳: pp.82-83】

「お湯を沸かすわ。クッレルボ、冷蔵庫から牛乳をとって」と、ネッリが言いました。
クッレルボは牛乳パックに鼻を突っこんで、それからパックの側面に書いてある日付を確認しました。
「賞味期限は今日です。これを使うのはどうでしょう」と、クッレルボが言いました。
「大丈夫にきまってるわ。そんなにすぐに悪くならないもの。クッレルボ、人はいっつも怖がってちゃだめよ。そんな人生、たまんないわ」
「いつも怖がってるわけじゃないけど」
「でも、あなた、いろんなことが怖いでしょ。ぬるい水。ネコ。他人の家のトイレ。それから、賞味期限ギリギリのもの」
「カケス家はそうなんです。おじいちゃまこそが、賞味期限間近のものを恐れているんです」
「それであなたもそうなりたいの?」
すると、クッレルボははたと考えこみました。
「ぼくにはどうにもできません」
「できるわ。ねえ、カケス家のかけ声を試してみましょうよ」
そう言うとネッリはグラスに牛乳を注ぎました。
「いい、叫んだら飲むのよ」
「それはできません。この牛乳は古いですから」
「あなたは恐怖に勝ちたいの?」
「勝ちたいです」
「それじゃ叫んで!」
クッレルボは牛乳が注がれたグラスをおそるおそる手にもつと、小さな声で言いました。
「カケス カケカケ ドケドケ ジェーイ ジェーイ ジェーイ!カケス スケスケ ダケダケ ドーン ドーン ドーン!」
そして、クッレルボはグラスを口元まで近づけましたが、頭を横にぶんぶん振りました。
「できません」
「ぜったいにできるわ!いっしょに歌いましょう。あたしも牛乳を飲むから」

文/訳 末延弘子 シニッカ・ノポラ&ティーナ・ノポラ著『リスト・ラッパーヤとハンサムボーイのクッレルボ』(2002)より


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