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Risto Räppääjä ja Hilpuri Tilli    原書名:  Risto Räppääjä ja Hilpuri Tilli
 (リスト・ラッパーヤとヒルプリ・ディル)
 作者名:  Sinikka Nopola, 1953~ & Tiina Nopola, 1955~
 シニッカ・ノポラ&ティーナ・ノポラ
 出版社 / 年:  TAMMI / 2004
 ページ数:  94
 ISBN:  9513131165
 分類:  児童小説
 備考:  Risto Räppääjä ja viimeinen tötterö
 Miksi emme totu pystyasentoon
 Risto Räppääjä ja villi kone
 Risto Räppääjä ja kauhea makkara
 Risto Räppääjä ja komea Kullervo
 Risto Räppääjä ja sitkeä finni
 Risto Räppääjä ja Nuudelipää
 Risto Räppääjä ja pakastaja-Elvi
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【要約】

リストの学校で食習慣アンケートが実施されました。そこで、リストは、ニーロ・ルンムカイネン先生から再調査を受けることになります。リストの面倒をみているラウハおばさんがグリンピーススープばかり食べさせているので、リストには「おなら」障害があるのではないかという疑いをかけられてしまいました。そんな誤解をもたれは大変と、ラウハおばさんがリストの学校へ直談判しに勇み足で行くのですが、病気で休養している代わりの先生と間違えられてしまいます。一足遅く到着した本当の臨時職員ヒルプリ・ディルは、気弱な性格からすごすごと引き返してしまいました。ところが、ラウハおばさんは、家庭科での調理実習も環境教育も先生になりきって大はしゃぎ。しかも、生徒の絶大な人気を獲得したラウハおばさんは先生に転向しようかと思うほど。ただし、リストとネッリはラウハおばさんのハメを外した授業は、恥ずかしくて聞いていられません。そこで、本来のヒルプリ・ディルにもう一度学校に来てもらうようにお願いします。ディルとかち合わないために、リストとネッリはラウハおばさんをキッチンに閉じ込める作戦に出ました。もの静かで、臆病で、温室で豆を育てているディルは、生徒たちから先生として認められるのでしょうか。そして、誤解は解けるのでしょうか?またしても一騒動ありそうな「リスト・ラッパーヤ」シリーズ第7弾。

【抜粋訳: pp.46-49】

「電話しよう。どっちがでる?」と、リストが言いました。
「リストが出てよ」と、ネッリ。
「なんて言う?」
「ヒルプリですかって聞くのよ。ラウハおばさんをあたしたちの学校から追い出すには、これしか方法がないわ」
リストが電話番号を押しました。
「もしもし」と、薄っぺらい女性の声が答えます。
リストは受話器をおきました。
「なんて言ってた?ヒルプリって言った?」
「いいや、もしもしだけだった」
「ヒルプリですかって聞かないとだめじゃない」
「もしヒルプリじゃなかったら、かっこわるいよ。ネッリが電話してよ」
ネッリは肩をすくめました。
「あたしとしては、秋学期ずうっとラウハおばさんが代わりの先生をしていてもぜんぜんかまわないんだから」
「わかったよ、電話するよ」と、リストはふぅとため息をついて、もう一度、番号を押しました。
「もしもし」と、か細い女性の声が答えます。
「もしもし」と、リスト。
「もしもし」と、女性。
リストはふたたび電話を切りました。
「なんで聞かなかったのよ」と、ネッリが問いつめました。
「だって、もしもししか言わないんだよ」
「名前を聞かなきゃ」
「恥ずかしいよ」と、リストは言いましたが、もう一度、番号を押しました。
「もしもし」と、女性の声は怯えています。
「名前はなんですか?」
「名前ですか?ディルです」
「えっ、なに?ディルですか?」
「ええディルです」
リストは受話器を置きました。
「ちがったよ」
「ちがうの?」
「ちがう。なんかエーディルっていう人だった」
「エーディル?」
「うん。エーディルだって」
「きっとまちがった番号にかけたんだわ。もう一回かけなおしてみて」
「これで最後だよ」
「もしもし、ディルさんですか?」
「ええ」と、蚊のなくような声が答えます。
「ありがとう」
そう言うと、リストは受話器をおきました。
「まちがいない」
「ヒルプリってこと?」
「いや、ディルだよ」
「もちろんディルにきまってるでしょ。ヒルプリ・ディルかって聞かないとだめじゃない」
「ぼくはもうかけないよ」
「あたしがかけるわ」
「だめだ、これはぼくのことだから、ぼくがかけるよ」と、リストは男らしく言いました。
「も、もし、もし」と、震える声が答えます。
「ヒルプリさんですか?」
「ええ」
「ヒルプリ・ディルさんですか?」
「ええ」
「ぜったいに?」
「え、ええ」
ネッリがリストに耳打ちします。
「家に行ってもいいか聞いて」
「家に行ってもいいですか?」
「ええ」
「ありがとう」と、リストは言うと受話器をおきました。

文/訳 末延弘子 シニッカ・ノポラ&ティーナ・ノポラ著『リスト・ラッパーヤとヒルプリ・ディル』(2004)より


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