【抜粋訳: pp.83-86】
ウィンナーソーセージとミュージシャン
ラウハの焼いたバナナパンケーキを食べようと、ペルホネン夫妻がみんなを自宅に招待しました。ラウハおばさん、下階に住んでいる白髪の紳士ミスター・リンドベリ、リスト、そしてネッリがそろってテーブルに着き、発見された子ねこのアルポは、くたびれてソファの片隅でうとうとしています。
「アルポも見つかったし、あたらしいお隣さんともなかよくなれたし、ほんとによかったわ」と、妻のピンヤ・ペルホネンが、バナナパンケーキをテーブルに運びながら言いました。
「さあ、いたただきましょう!きっと、とろけそうなくらいおいしいわよ」
「そんな、やめてください。おふたりの番組「おなかいっぱいペルホネン」で教えられたとおりに作っただけですから」と、ラウハが言いました。
「それでも、レシピどおりにパンケーキをつくれる人なんてそうそういませんよ」と、夫のポントゥス・ペルホネンがよいしょしました。
ピンヤが最初の一切れをラウハおばさんとミスター・リンドベリによそいます。
「どうぞ、ラズベリージャムもそえて!」
「うまい!香りも芳醇で、しっとり感があって、ふんわりと柔らかい。これこそまさに本物だ!」と、ミスター・リンドベリが絶賛しました。
「おいしいわ」と、ネッリ。
「すごくイケルよ」と、リスト。
「最高の出来だ」と、ポントゥス。
「このしっとり感はなかなかできるものじゃないわ」と、ピンヤもみんなに続いてほめました。
ラウハの口元に幸せそうな笑みがうかびました。
ポントゥスが口元をぬぐってネッリにこう言いました。
(・・・)
「リストがお友だちになってくれてよかった」
「これでネッリもいつも一人ぼっちになることはないね」と、リストが言いました。
「一人ぼっちってどういうこと?ネッリにはアルポがいるでしょ」と、ピンヤは驚いた様子です。
「でも、ふたりともいつも留守だもの」と、ネッリがぼそりとつぶやきました。
「ネッリ!ふたりはすごくハードなテレビのお仕事をしているのよ」と、ラウハが声を上げました。
「ネッリ、とってもさみしかった?」と、ピンヤがたずねると、ネッリは小さな声でこう答えました。
「うん」
「だから、ぼくはなんども言ったんだ」と、ポントゥスが大きな声をだしました。
「ポントゥス、あなたの言うとおりだったわ」
「ピンヤ、どうしようか」
ふたりはお互いに顔を見あわせると、声をそろえて言いました。
「ラウハおばさん!」
すると、ラウハおばさんは立ち上がって、こう言いました。
「だめよ!わたしはベビーシッターにむいてないの。歌も歌えないし、遊びもできないし、宙返りすらできないわ。リスト以外の子どもたちに気に入られないの」
「おいおいラウハ。そんなことないだろう」と、ミスター・リンドベリが言いました。
「いいえ、そうなの!ほかのことだったらなんでもやるわ。たとえば、朝から晩まで料理をしたり・・・」
「それをわたしたちは提案すればいいのよ。以前、番組のアシスタントを探している話をしたでしょう。その役にあなたがぴったりなんじゃないかって、確信してきたの」
「そうすれば、ぼくらはもっと家にいられる。つまりラウハがテレビに出ているときは、ぼくらペルホネンは家でラウハのレシピどおりに料理をするんだ」と、ポントゥスがピンヤに続いて言いました。
「有名人のペルホネン夫妻がわたしのレシピで料理をつくるっていうの?でも、そのときリストはどこにいればいいの?」
ピンヤはポントゥスを見て、こう言いました。
「リストはドラムをたたくわよね!ひらめいたわ。レストランっていう設定でスタジオを用意しましょう。レストランにはミュージシャンがもちろん必要よね」
「でも、どんな料理をつくればいいのかしら?」
「まかせてよ。ウィンナーソーセージとマッシュポテトだよ」と、リスト。
「それがいい!」と、ネッリ。
「番組名を考えないと」と、ポントゥスが言うと、ミスター・リンドベリがこう提案しました。
「それじゃあ「ウィンナーソーセージとミュージシャン」というのはどうかな?」
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