【要約】
空と森をわかつ丘の上に立つ空色の家に、猫のマウと犬のバウは同居しています。夢見る気まぐれロマンチストで理論家のマウと、毎日の畑仕事に精をだす忠実なリアリストのバウは、起きる時間も、好きなものも、考え方も違います。
トマト品評会に出品するためにバウが丹精こめて育てたトマトを、マウが自分の一万ピースパズル完成祝いにトマトソースにしてしまったり、バウの釣りの仕方に横から口だしするマウにバウはうんざりしたり、ゲーム好きのマウが蹴ったサッカーボールにバウの自慢の野菜が台無しになったりと、心配に事欠きません。
思いのすれ違いはありますが、おたがいのことを大切に思う気持ちは同じです。丘のふもとの池に映る月の橋をわたって、月までサイクリングしたいというマウのために、バウは畑の収穫物を市場で売って自転車を買ってあげます。一方、マウはクリスマスに自分の宝物の双眼鏡をバウにプレゼントします。いつもきまったことをきちんとこなすことにがんばりすぎて、バウが疲れていると、「だれもなにも期待してないよ」とマウは励まし、完璧であろうとするばかりにマウが臆病になっていると、「完璧っていうのは自分らしくあることだよ」とバウが優しく寄り添います。
あるとき、冬が苦手なマウは渡り鳥といっしょに南に行くと言って出て行きました。丘の上の空色の家に一人残されたバウは、言葉にできない寂しさをおぼえます。数日後にはマウは戻ってきましたが、バウはかけがえのないものの喪失感を忘れることができませんでした。そして、マウも、移ろいゆく時間のなかで、すべてはいつか終わってしまう不安を抱き、大切な友だちの存在を思います。
「月までサイクリング」から「終わりと始まり」まで20篇を収蔵した短編連作集「マウとバウ」シリーズ第1弾。
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