【要約】
鬱蒼とした森の奥深くに小さな木がありました。そこに、黄金色の王冠をいただくキクイタダキが巣を作りました。スズメよりも小さく、手のひらの半分にも満たないその鳥を、ワシやカラスは、「ちっぽけなやつだ」とバカにします。小さくては生きていけないのか。小さくては何もできないのか。キクイタダキは苦しみ、悩みました。すると、その小さな声を聞いていた太陽が答えます。
「ありのままでいいんだよ」
キクイタダキの黄色い冠羽は太陽から授かった光の色であり、光を必要とするところに届けることができる証なのだと言われたキクイタダキは、目に見えるすべてのものに喜びを感じるようになりました。そして、世界のすべてを知りたいと思うようになります。「すべては知ることはできない。でも、自分にできることは見つけられる」という太陽の言葉を聞いて、キクイタダキは森を出て町に飛び立ちます。
行き交う車、生き急ぐ都会の人間、木も林もない町。太陽の光を届けに来たと交差点で叫んでも、気づいてくれる人は誰もいません。ついには疲れ果てて路上に落下したキクイタダキに気づいたのは、小さな女の子でした。女の子に助けられ、折れた翼はみるみるうちに回復し、キクイタダキは森へもどることができました。
キクイタダキは、小さな木に、町の小さな女の子が自分の命を救ってくれた話をしながら、自分にできることを発見します。それは、始まりは小さくても大きなことができる、ということでした。キクイタダキは、もう一度、女の子のもとへ行こうと心に決めます。今度は森の木の種をたずさえて。小さな種を運んで、女の子の庭に植え、それが大きな木になって、ふたたび種をつけました。種は風に乗って町に広がり、そこから森が生まれ、大きな生命を結びました。
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