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Hippiäinen ja hyvän päivän sadut    原書名:  Hippiäinen ja hyvän päivän sadut
 (小さな鳥のはなし)
 作者名:  Esko-Pekka Tiitinen, 1956~
 エスコ=ペッカ・ティーティネン
 出版社 / 年:  Tammi / 2004
 ページ数:  64
 ISBN:  978-951-31-3160-9
 分類:  絵本
 備考:  Voi vallatonta
 Lintu ja poro
 Villapäät

【要約】

鬱蒼とした森の奥深くに小さな木がありました。そこに、黄金色の王冠をいただくキクイタダキが巣を作りました。スズメよりも小さく、手のひらの半分にも満たないその鳥を、ワシやカラスは、「ちっぽけなやつだ」とバカにします。小さくては生きていけないのか。小さくては何もできないのか。キクイタダキは苦しみ、悩みました。すると、その小さな声を聞いていた太陽が答えます。

「ありのままでいいんだよ」

キクイタダキの黄色い冠羽は太陽から授かった光の色であり、光を必要とするところに届けることができる証なのだと言われたキクイタダキは、目に見えるすべてのものに喜びを感じるようになりました。そして、世界のすべてを知りたいと思うようになります。「すべては知ることはできない。でも、自分にできることは見つけられる」という太陽の言葉を聞いて、キクイタダキは森を出て町に飛び立ちます。

行き交う車、生き急ぐ都会の人間、木も林もない町。太陽の光を届けに来たと交差点で叫んでも、気づいてくれる人は誰もいません。ついには疲れ果てて路上に落下したキクイタダキに気づいたのは、小さな女の子でした。女の子に助けられ、折れた翼はみるみるうちに回復し、キクイタダキは森へもどることができました。

キクイタダキは、小さな木に、町の小さな女の子が自分の命を救ってくれた話をしながら、自分にできることを発見します。それは、始まりは小さくても大きなことができる、ということでした。キクイタダキは、もう一度、女の子のもとへ行こうと心に決めます。今度は森の木の種をたずさえて。小さな種を運んで、女の子の庭に植え、それが大きな木になって、ふたたび種をつけました。種は風に乗って町に広がり、そこから森が生まれ、大きな生命を結びました。

【抜粋訳: p.6】

「女の子はね、ぼくの声に気づいたんだよ。ぼくの太陽の色を見たの」キクイタダキがうれしそうに言いました。
 それを聞いた大きな鳥たちは、笑い飛ばしました。
「さいごまで生き残るのは大きいやつなんだ」
 小さい木とキクイタダキは、大きな鳥たちの言葉にきずつきました。
「町の女の子は小さかったよ」キクイタダキが小さな木にそっと言いました。
「そして、ぼくたちも小さい」小さな木が答えました。
 小さなものたちのささやきを聞いていた太陽は、ふたりをやさしく照らし、ほほえみました。そのとき、キクイタダキは気づきました。
「ぼくにもできることがある!」
 小さな木もこずえを揺らして、こう言いました。
「うん。小さくったって、大きなことはできる」

文/訳 末延弘子 エスコ=ペッカ・ティーティネン著『小さな鳥のはなし』(2004)より


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