KIRJOJEN PUUTARHA
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Siiri ja kamala possu    原書名:  Siiri ja kamala possu
 (シーリとかわいそうなブタ)
 作者名:  Tiina Nopola, 1955~
 ティーナ・ノポラ
 出版社 / 年:  TAMMI / 2005
 ページ数:  31
 ISBN:  9789513134174
 分類:  絵本
 備考:  Siiri tekee maalin
 Siirin jouluyllätys
 Siiri ja Kertun kirppu
 Siiri ja sotkuinen Kerttu

【要約】

シーリは明るくておちゃめな女の子。ひとりっ子のシーリは、おとなりのオット三兄弟(ちびオット、まんなかオット、おおきいオット)と仲よしです。シーリには、オット三兄弟のほかに、たいせつな遊び仲間がいます。ウサギのぬいぐるみのププです。

ある日、ププのお腹に大きな穴があいて、中綿が飛びだしてしまいました。もとどおりに直すのはむずかしそうです。すると、おおきいオットが小児科病院に電話をかけてくれて、みんなでププを病院に連れていったのですが、お医者さんから「ぬいぐるみ病院」を紹介されました。

ぬいぐるみ病院には、ケガを負ったくまのぬいぐるみがベッドに並んでいました。ププの治療には一週間かかると言われたシーリは、そのまま家に帰ります。家に帰っても、ププのことが恋しくてたまりません。紙人形で遊んでみてもつまらないし、ププが病院でほかのくまのぬいぐるみたちにいじめられているかもしれないと思うと、シーリは気が気ではありません。

ププが回復するまで、代わりのぬいぐるみが送られてきました。シーリ宛ての包みのなかに入っていたのは、ブタのぬいぐるみでした。色はくすんでかわいくありません。シーリは、部屋のすみっこにブタをほうりなげました。ププが元気になってもどってきたので、シーリはブタを返そうとしますが、ブタには持ち主がいません。ぬいぐるみ病院に置き去りにされて、ひとりぼっちだったのです。シーリは、あたらしく家族に迎え入れ、ププの快気祝いをオット三兄弟と開きました。

「ヘイナとトッスの物語」シリーズ(講談社刊)でおなじみのティーナ・ノポラの「シーリ」シリーズ第四作目。ほかに、『Siiri ja kolme Ottoa(シーリとオット三兄弟)』(2002)、『Siiri ja yläkerran Onni(シーリと二階のオンニ)』(2003)、『Siiri ja sotkuinen Kerttu(シーリとこまったケルットゥ)』(2004)、『Siiri ja Kertun kirppusotkuinen Kerttu(シーリ、音楽教室へいく)』(2006)があります。

【抜粋訳】

 ぬいぐるみ病院には、ベッドがずらりと並んでいます。どのベッドにも、くまのぬいぐるみが横になっていました。シーリはププのおなかの穴を看護婦さんに見せました。
「しんぱいないわ。ププは一週間もしたら、元気になるからだいじょうぶよ」看護婦さんが言いました。
 シーリはププを二段ベッドにねかせました。
(ププはすごく小さいから、ひとりでだいじょうぶかな?)シーリは思いました。
「じゃあね、ププ」シーリはそっとささやくと、ププのほっぺたをやさしくなでました。
 シーリはじぶんの部屋で紙人形遊びをしました。
(ププがいなくてさみしいな。病院でくまのぬいぐるみにいじめられていたらどうしよう。ププの長い耳をからかっているかもしれない)シーリはこわくなって、あわてて居間にかけこんで、パパとママに言いました。
「病院でププがくまのぬいぐるみにいじめられてるの!ププをつれもどしてきていい?」
「くまのぬいぐるみはいじめるようなことしないわ。でも、ププがはやく退院できるか聞いてみましょうね」ママがなぐさめました。
 ププの病気はまだ治っていませんでした。ところが、かわりのおもちゃを送ります、と言われました。
 シーリはオット三兄弟に、ぬいぐるみ病院から「なにかほかのおもちゃ」を送りたいと言われたことを話しました。シーリは「なにかほかのおもちゃ」なんてほしくありませんでした。
「なにかほかのおもちゃって、ネズミじゃない」ちびオットが言いました。
「ヘビかも」まんなかオットが言いました。
「そんなあ」シーリが言いました。
「人形かもしれないよ」おおきいオットが言いました。
「人形なんていらない。ププがいい」
「じゃあ、なにかほかのおもちゃが来たら、ぼくにちょうだい」ちびオットが言いました。
「いやよ。ウサギかもしれないもん」
 つぎの日、シーリ宛てに小包がとどきました。シーリは指でつついてみました。
「やわらかい」
 シーリはゆっくり包みを開けました。まず耳がでてきました。
(あれ、ほんとにウサギかも)シーリはびっくりしました。
 包み紙をやぶると、しっぽがでてきました。
(ウサギにしてはへんなしっぽ。クルクルしてる)
 シーリは包み紙をどんどんやぶりました。
「ブタだ!」
 ブタはつぶらな瞳でシーリを見つめています。
「かわいくない。色もきたない。ぜんぜんププみたいじゃない」シーリが言いました。

文/訳 末延弘子 ティーナ・ノポラ著『シーリとかわいそうなブタ』(2005)より


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