【要約】
自分だけの友だちがほしいと思う小さな黒い犬のケルップ。ケルップの誕生日に送られてきた大きな箱の中に入っていたのは、黒髪のかわいらしい人間の女の子でした。ケルップは、とても嬉しくなって、女の子をヘリナと名づけます。ところが、ヘリナはケルップの思いどおりになりません。骨のガムは食べてくれないし、飲み物はマグカップでしか飲まないし、夜になるとホームシックになって泣きだすヘリナに、ケルップはてんてこまい。一緒に散歩していても、ヘリナは自分のところから離れて、車や自転車のところに駆けよったり、ほかの子どもと遊んだりして、言うことを聞いてくれません。ついにケルップはヘリナを頭ごなしに叱ります。すると、友だちのダックスフントのアッフェに「ヘリナは人形じゃないよ」と言われて、様子を見ることにしました。
ヘリナには手を焼きますが、ケルップはヘリナに飽きることはありませんでした。一緒にジュースを飲んだり、木陰でお昼ねしたり、外に散歩に連れていったり、ヘリナがしたいことをケルップは考えるようになりました。友だちは自分といつもおなじ考えでおなじ行動をするわけではないのです。ある日、外でかけっこをしていたら、ヘリナがそのままどこかに行ってしまいました。ケルップは、『いぬ新聞』の掲示板に迷子の知らせを懸賞つきで載せて、森まで探しに行きました。
キツネの手を借りてケルップはヘリナを探し当てました。ヘリナは洞窟で疲れて眠っていました。ヘリナを発見したあと、ケルップは『犬のための人間の育て方』というガイドブックに目を通しました。人間は犬とおなじようなものだと思っていたケルップは、あらためて違いに気づきました。話す言葉も歩き方も違います。犬にくらべて嗅覚も劣ります。違いはたくさんあるけれど、違いを超えてふたりを繋ぐ強いなにかがあるとケルップは思いました。それは、おたがいに好きだという気持ちだとケルップは思いました。ヘリナはお父さんとお母さんのいる家に帰り、今度はケルップがヘリナのところに行くことになりました。
作者のサリ・ペルトニエミは、ファンタジーを得意としている児童作家で、人間と森の住人の心の通いを描いたウルスラ姫と息子ヘラジカのファンタジー物語『Hirvi(ヘラジカ)』(2001)は、2004年度IBBYオナーリストを受賞しました。『ケルップと少女』は、フィンランド児童作家団体が主催するアルヴィッド・リュデッケン賞の候補作に選ばれました。
|