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Aatos ja Sofian sokeriletit    原書名:  Aatos ja Sofian sokeriletit
 (アートスとソフィアの物語2 ふたりに降る雪)
 作者名:  Riitta Jalonen, 1954~
 リーッタ・ヤロネン
 出版社 / 年:  TAMMI / 2012
 ページ数:  36
 ISBN:  951316554X
 分類:  絵本
 備考:  Revontulilumi
 Hula-hula
 Minä, äiti ja tunturihärkki
 Tyttö ja naakkapuu

【要約】

好きな人と一緒ならどんなに小さなことも大きな物語になる。雪の日のソフィアの三つ編みは糖衣をまとったように白くなり、ソフィアと踏む雪面からきゅっきゅっと鳴く動物が生まれ、雪の上に広げた絨毯は湖に空けた氷の穴になり、ふたりで座った収納箱の中には愛がいっぱい詰まっていて、雪の巣穴に眠るのは目に見えないアートスの思い。少年アートスと少女ソフィアの丁寧に美しく編み上げられていく小さな恋の物語。

【抜粋訳:pp.32-34】

「だれのために巣穴をほろうか?」ソフィアは手袋にくっついた雪のかたまりを巣穴にはらい落としながら言いました。
「どんなに大きな動物でもだいじょうぶよ」
「なんとも言えない。夜のうちにやって来て、ねむるかもしれない。明日また見にこよう。だれかが来たら、この松ぼっくりが動いているはずだよ」
 アートスは松ぼっくりを針葉のうえにのせました。
「もしもだれも来なかったら?」
「そのときは目に見えないものを世話しよう」
「どうやって目に見えないものの世話ができるの?」
「心で」
「アートスが熱を出したとき、明日にはきっとよくなって遊びに行けるって、わたし、心で思っていたわ」
 ソフィアはにっこり笑いました。
 アートスの胸は高鳴って、上着をぎゅっと押さえました。  アートスはすぐにでも屋根裏の収納箱の中身のことをソフィアに話したくなりました。でも言葉が出てきません。
「ぼくの口はテープでふさがってる?」
 アートスはソフィアを振り返ってたずねました。
「まさか」
「いや、ときどきそうなんだ」
 ソフィアは、アートスがどんなにたいせつなことを言おうとしているのかわかっていないようでした。
「今からこのなかに入れるよ」
 アートスは雪の巣穴のなかに、目に見えないなにかを落としました。
「それじゃあ、明日までアートスの心の世話をして、つぎはわたしの心ね」

文/訳 末延弘子 リーッタ・ヤロネン著『アートスとソフィアの物語2 ふたりに降る雪』(2012)より


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