KIRJOJEN PUUTARHA
フィンランド文学情報サイト
独立期~第二次大戦までの文学 |
||||
アイロニーの時代1910年代は社会や人間に対する失望感が前面に押し出されました。そして、第一次世界大戦勃発後は否定的な事実が知識階級者を落胆させました。金銭価値や物質価値が叫ばれ、価値観に対する問題提起がなされました。 この頃、都市と地方の二項対立が表面化します。都市が頽廃を代表しているのに対して、地方は生活力を表わすものでした。そして地方の農民を描写した作品が多く残されています。例えば、マイユ・ラッシラの『マッチを借りて』(1910)、『ポホヨラの農家』(1911)、フィンネの『健やかな男』(1915)やリンナンコスキの『ヘイッキラ屋敷をかけた戦い』(1905)や『難民』(1908などが挙げられます。とりわけ、ラッシラの『ポホヨラの農家』(1911)は、農夫生活は我々が想像しているほど決して牧歌的ではなく、物質や所有物に対して泥沼の戦いが繰り広げられる場所でもあると、農夫生活を問題提起したこの時代を代表作品です。 ヨエル・レフトネンはアイロニーを作品に取り入れ、価値観を問題提起するだけでなく、それに滑稽さを味付けします。『ある夏』や『朽ちた林檎の木』(1918)では、崩壊しつつある社会をアイロニーで描写し、個々人の人生と世界の間で生じる矛盾を浮き彫りにしています。同じようなテーマで、レフトネンは二部作の長編小説『プトキノトコ』(1919,1920)を著しています。主人公サヴォ人のユータス・カクリアイネンは、小作人という不安定な立場に不満を抱き、小屋の修理にも身が入りません。主人のアーペリ・ムッティネンがいくら注意をしても、仕事に手を付けようとはしないのです。『プトキノトコ』は、「新時代が蹂躙した焼畑文化の伝統」を風刺した作品です。しかしながら、カクリアイネンの逆境にも関わらず、その行動には何か勇姿が窺えます。例えば粉袋を担ぐ場面がそうです。このカクリアイネンの反抗は自分自身に刃を向けますが、それは隔離者を生み出した社会に背く最後の手段なのです。
同様のテーマは、マイユ・ラッシラの『蘇生。冒険物語、探求者の物語』(1916)でも見受けられます。主人公ヨンニ・ルンペリがヘルシンキ波止場で放蕩生活を送ります。この主人公を介してラッシラは知識階級者に非難の視線を送り、社会に見捨てられた者の真実の姿を問題視しました。 児童文学に目を向けてみると、ヤルマリ・フィンネは児童新聞「ツバメ」に「キルユネン一族の冒険」(1914-1925)の連載を開始しています。ここでも、社会矛盾が問題に上がり、風刺の対象は官僚、政治的運動、民主主義社会、そして平等観念です。
|
||||