どうしたらいいのかわからないほど
幸福でいっぱいだった
たらいのなかで ボウルのなかで 桶のなかで
パン生地みたいに ぐんぐん膨らんで
ぶくぶくぷくぷく音を立てだした
それを わたしは 窓の隙間につめ込んだ
床の穴に 木摺の間に
隙間風から守るため 天井の隙間につめ込んだ
コートのポケットに 魚のハラコいっぱいに
蚕もいっしょにつめ込んだ
空っぽの食器に ぎゅうぎゅう詰めに押しこんだ
それは ぐんぐん膨らんで 冴えない頭をぐいと上げ
歯のないぐにょぐにょ口を あんぐり開けた
だから わたしは シーツケースで塞いだ
抽き出しとシェルフカバーで塞いだ
本の向こうへ ぎゅうぎゅう押しやった
大きな塊を ソファーの向こうへ マットの下へ 押しやった
クレープみたいにぺちゃんこにしたのに どんどん溢れてくるばかり
家は発酵の匂いでいっぱいで ぶくぶくぷくぷく溢れでて
どんどん 迫って 這い出して
指に絡んで キーボードの隙間を塞ぐのだ
ゴミ箱を 道具箱を おもちゃ箱を
シーツケースを 鉛筆立てを トランクを塞ぐのだ
そこから どんどん溢れでるから 押しやって蹴りやって
ぺちゃんこにしてつめ込んだ
わたしがここにいる理由など 問わないで
自然の声が呼びかけてくる だから 道をきれいにして
わたしは うしろを塞ぐのだ
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