【要約】
車掌として働く中年のフィンランド人男性ペッカ。突然、ロシアとの国境沿いの町ヴァイニッカラで回心したと言い、家族や教会牧師と一波乱を巻き起こします。サンクトペテルブルグの金箔師だった兄のセッポと企んで犯した聖画像の密輸、フィンランド不況時代に亡くなった父のロシア人隠し子カティヤの遺産をくすねた罪悪感。その罪から逃れるかのように、貧困にあえぐロシア人の少年の里親となって取り組む慈善事業。家庭では、長く子どもに恵まれなかった妻エリナと、相談員カーリナとの勉強会の末に養子縁組に踏み切るものの、自分たちがはたして養親になる資格があるのかという壁にぶつかります。また、信心に目覚めたペッカの告解に、牧師マルッティは自分の信心を見つめ直し、牧師の仕事を見合わせることになります。隠し子の存在がわかった未亡人の母ヘルミは、果たしてどんなふうに事態に向き合うのでしょうか。
ホタカイネンの細やかで大胆な人物描写とコミカルで即妙なジョークが、ペッカの回心騒動によって浮き彫りになる辛い現実問題との対面を促します。
流動的で可変的な現代社会では、なにを信じるのでしょうか。商品や情報の溢れる資本主義のまっただ中で、なにに価値を置くのでしょうか。
兄セッポについては、脳溢血で倒れた父と、サンクトペテルブルグ建都300周年記念事業に金箔師として家を出た息子との物語『イサク教会(Iisakin kirkko)』(2004)で語られています。
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