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Kemosynteesi    原書名:  Kemosynteesi
 (化学合成)
 作者名:  Jouni Inkala, 1966~
 ヨウニ・インカラ
 出版社 / 年:  Siltala / 2011
 ページ数:  73
 ISBN:  9789522340580
 分類:  詩集
 備考:  Minkä tietäminen on ihmiselle välttämätöntä
 

【要約】

太陽の光が届かなくても、生命がうまれる場所がある。深海だ。地上では尖端から緑を光合成するけれど、地底では深部から有機物を化学合成する。熱水が噴出する割れ目には嫌気性の細菌が生存し、太古から脈々と密やかに生き抜いてきた。原始生命は闇から生まれ、死の危機に晒されながら、光を生みだした。

創造とは、あるいは、光とは、闇を孕んだ生成なのだろう。極地の冬は長くて暗い。けれども、人びとは生きている。目には見えないけれど、ざわめきに、匂いに、生命の手触りがあり、真実はたしかに在るのだと、インカラは言う。待望の第九詩集。

【抜粋訳:p. 12, 16】

海図

あなたの父親が死んで
子どもが生まれたら、子どもが生まれたら
それは父親との

新たな繋がり。

なにかがあなたの中で動いている。
昼と夜が危機に進路を求め、
あなたはかつてない舵をとる。


盆栽
石上樹

静かで一途な
日本人の精神のように

私の沈黙も
祈り安らぐ

(そうだ!)

その深奥にあるものを隠すのは鼓膜なのか?
大切な瞬間にそれは鳴りいだすのか?

一瞬は絶えず
包み展く

膨らむ月と共に心はつくられる

私は早すぎたのか―
遅すぎたのか―

決断の瞬間ですら
真なる核は、はかれない

文/訳 末延弘子 ヨウニ・インカラ著『化学合成』(2011)より


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