【要約】
ちびのモンスターはなかなか寝つけません。お父さんモンスターの作ってくれたコウモリの夜食は胃にもたれ、お母さんモンスターが読み聞かせてくれたお話は頭にはいらず、なんだかそわそわしています。そうです。ちびのモンスターは、明日からモンスター学校に上がるのです。登校初日の朝、「歯や爪はぴかぴかに研いだの?学校までひとりで行ける?」と聞くお母さんモンスターは心配そう。お父さんモンスターは、「まともなモンスターになるために学校に行くんだよ」と言いながら、森の外れまで見送りました。
学校では、モンスターになるためにいろいろなことを勉強します。睨むこと。唸ること。叫ぶこと。良いモンスターというのは不良であることなのだと、先生モンスターが言いました。おっとりしているちびのモンスターは、「でも、なんのためにぼくたちは学校に来ているんですか?」と、先生に聞きました。先生のおならや息は気絶するほどクサいし、怖さも迫力満点ではあるけれど、話をよく聞いてくれる先生でした。
先生は、新入生におなじ質問を投げかけました。黒い毛むくじゃらのモンスターは、もっと強くなるため。水かきのついたモンスターは、スポーツ万能な先生に憧れて。緑の毛をしたモンスターは、森で迷わないように方向感覚をつけるため。大きな角をしたふてぶてしいモンスターは、答えられませんでした。
そこに一人、明らかに浮いているモンスターがいました。海の向こうからやって来た転校生で、ひょろっとして青白く、垂れ耳で角も尻尾も毛もありません。ほかのモンスターは爬虫類を食べますが、その子はベジタリアンです。モンスターはたいてい一人っ子ですが、その子には16人も兄弟がいました。しかも、ほかのモンスターとはちがって、ちゃんと自分の名前がありました。ホイ・ポッロイというラテン語名をもつ転校生は、お友だちを作りに学校にやって来たと言いました。
ホイ・ポッロイが、肉を食べず、毛もなくて、口から火をはき、行儀が良いことに、モンスターたちはからかって笑いました。ちびのモンスターだけが、ほかとちがうところをほめてかばってあげると、ふたりは仲よしになりました。体育の時間、ホイ・ポッロイとちびのモンスターはおなじチームになりました。ホイ・ポッロイはガイコツラグビーで大活躍を見せて、ほかのモンスターたちをぎゃふんと言わせました。
お昼休みに、ホイ・ポッロイは戦争から逃れるためにここに来たことを打ち明けます。人間の住む町や村が増えてきて、すみかを追いやられたヤギモンスターとの話し合いが決裂し、戦争に発展したのでした。安らぎと愛するものを奪ってしまう戦争のことを、ちびのモンスターは深く考えました。家に帰ったちびのモンスターは、お父さんモンスターに、戦争のことについて聞きました。お父さんモンスターは「世の中は良いことだけじゃないし、どんなモンスターも完璧じゃない」と答えます。そして、ちびのモンスターはこう言いました。「だから学ぶんだね」と。
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