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Palava maa    原書名:  Palava maa
 (大地燃ゆ)
 作者名:  Olli Sinivaara, 1980~
 オッリ・シニヴァーラ
 出版社 / 年:  Teos / 2007
 ページ数:  63
 ISBN:  9789518510850
 分類:  詩集
 備考:  Hiililiekki

【要約】

色彩は光の行為であるとゲーテは言った。しかし、色は、光を捉え、そのふるまいを感じる観察者なくして生成されない。生成とは、静的ではなく動的で、在ることよりも成ることである。ひとたび生まれた色は、光と共同しながら、燃え尽きようともかたちを残してゆく。

シニヴァーラが内に捉えた光と色は、草の緑へ結合し、雫の弧を描き、雪の結晶となり、詩へと昇華する。充溢した果実は燃焼してゆく光の味がし、傷跡は旗弁となって出帆する。見えた外界を抑えることなく取りこみながらも放出し、内的な経験と混和させる。輻射する太陽、横溢する緑、進みつづける生命との神秘的な合一、あるいは、万物との一体化を、シニヴァーラは鮮明に感知する。

処女詩集『炭焔(Hiililiekki)』につづく第二弾。

【抜粋訳:p.59】

増殖する森の青、
深化する草と枝。トーンは
水に投射された太陽の轍のように
急斜面や木陰へ疾走する

日脚は小道を彷徨う、しだいに短く
おそらく最後。しかし、貫く光は
終わりを知らず、青と緑から降りてゆく、
風に煽られる紙切れのように
一瞬のうちに忘れてしまった死のように、
大気の金の花弁で充たされた軽やかな膜のように。

苔のうねりに立つ漆黒の湖は
もうひとつの膜。そこに沸き立つものは
森の光景をけっして忘れない、
飛び立つ彼らは
渡って冬の壁を越えてゆく
薄いベールを纏って明滅する種のように、
生まれいずる葉の揺らぎのように、

見えないものが発火する。

文/訳 末延弘子 オッリ・シニヴァーラ著『大地燃ゆ』(2007)より


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