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Yhtä juhlaa    原書名:  Yhtä juhlaa
 (お祭りのごとく)
 作者名:  Johanna Venho, 1971~
 ヨハンナ・ヴェンホ
 出版社 / 年:  WSOY / 2006
 ページ数:  123
 ISBN:  9510315966
 分類:  詩集
 備考:  2006年度カトリ・ヴァラ賞受賞作
 Puolukkavarvas

【要約】

時間と空間に縛られる日常のなかで、じぶんの存在を確かめられるのは、じぶんを存在可能にしている愛。その愛のかたちを、ヴェンホは、母性に見いだし、女性であることに見いだし、詩人であることに見いだします。あらゆる世界の現象に心を開いて、形や色や音を体全体で感じて、弛まぬ生命の運動のなかから、迸る美を見いだします。止まぬ美への感動と生命を愛する意志は、リズムを刻んだ音楽のように流れ、じぶんの新しい在りようを模索します。

【抜粋訳:pp.19-21】

どうしたらいいのかわからないほど
幸福でいっぱいだった
たらいのなかで ボウルのなかで 桶のなかで
パン生地みたいに ぐんぐん膨らんで
ぶくぶくぷくぷく音を立てだした
それを わたしは 窓の隙間につめ込んだ
床の穴に 木摺の間に
隙間風から守るため 天井の隙間につめ込んだ
コートのポケットに 魚のハラコいっぱいに
蚕もいっしょにつめ込んだ
空っぽの食器に ぎゅうぎゅう詰めに押しこんだ
それは ぐんぐん膨らんで 冴えない頭をぐいと上げ
歯のないぐにょぐにょ口を あんぐり開けた
だから わたしは シーツケースで塞いだ
抽き出しとシェルフカバーで塞いだ
本の向こうへ ぎゅうぎゅう押しやった
大きな塊を ソファーの向こうへ マットの下へ 押しやった
クレープみたいにぺちゃんこにしたのに どんどん溢れてくるばかり
家は発酵の匂いでいっぱいで ぶくぶくぷくぷく溢れでて
どんどん 迫って 這い出して 
指に絡んで キーボードの隙間を塞ぐのだ
ゴミ箱を 道具箱を おもちゃ箱を
シーツケースを 鉛筆立てを トランクを塞ぐのだ
そこから どんどん溢れでるから 押しやって蹴りやって
ぺちゃんこにしてつめ込んだ
わたしがここにいる理由など 問わないで
自然の声が呼びかけてくる だから 道をきれいにして
わたしは うしろを塞ぐのだ

文/訳 末延弘子 ヨハンナ・ヴェンホ著『お祭りのごとく』(2006)より


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