【抜粋訳: pp.25-28】
夜になるといつも、オレは鏡の前に立って自分の姿を見る。ラップランドの僻地の断片像。イケてるとはけっして言えない。鼻は適当に顔にとってつけたようで、どっかの穴から鼻水が垂れてくる。あたかもデザイナーが考えたみたいだ。(・・・)肌の調子は良くない。ここ数年間、ポテトチップとコーラばかりとっていたからだ。髪は、まあまあとしか言いようがない。耳にはこれといった不満はない。頭蓋骨にきちんとくっついて、ラテみたいにぶらんと垂れ下がってないからな。でも、トータルでどうにかしないといけない。若者はトータルなんだ。これは事実だ。トータルでコンバータは20ある。年齢、性別、住所、学校、友人、趣味、食事、両親、継父か継母、つまりセカンドホームシステムってやつだ、そして靴、ズボン、シャツ、ケツ、その他もろもろのルックスシステム、そして最後にいちばん重要なのがボディだ。これにオレは力を入れている。足は棒みたいに細くてもかまわない、だってカーゴパンツだったらケツの具合をわかる人なんていないだろ。だけど、ぴったりフィットのちびTシャツ時代にあって、ボディの意義はこれでもかっていうくらいに強調されている。ボディは見せる時代だ。そこにポテトチップとコーラがもろに出る。150メートル先からでも、ボディの管理をしていないカラダかどうか、オレ的にはわかる。ヘソはダイナモだ。あらゆるセンターだ。そこからプラスにいくかマイナスにいくか、すべては自分にかかっている。いろんなことに左右されるけれど、その良い例はオレの継父だ。
コイツは、自分の肉でできたズダ袋をぶら下げている。うぇっ、最悪だ。それで、なんにつけてもオレたちの話にぶつぶつ言いやがるし、オレのことにブタの鼻ズラを突っ込んでくる。自分は、ビールやソーセージやパイやお買い得タルトで膨れあがった腹の管理もできないくせにさ。ボディを管理できない男は、トータルでもダメだ。さっきも言ったように、トータルにはコンバータが20あるんだ。
夜になるといつも思う。オレは継父になにをしてやれるのかって。というか、継父をどうしようかってことだな。地熱で蒸し焼きにしてやってもいい。あの肉の量を考えてみろよ。二度の結婚の間に、腹に溜め込んだんだぜ。ちょっとじっくり考えてみよう、よし。
ちょっと待てよ、一週間は7日だ。一年で365日。安息日になるたびに、首の裂け目から300グラムくらいの精肉がなんらかの形で腹の底に旅をする。そのうえにビールを煽る。それが固形物を溶かして底まで運ぶんだ。それからソファに横になる。横になってなにもしない。ドイツやイギリスやアメリカの刑事物をじっと見る。その間、毎晩のように肉は腹の壁と化していくんだぜ。そうオレは思ってきた。すげぇロースト肉。この辺の住民分はある。狩猟祭には、友人全員、母親の前の旦那、スウェーデンクルーザー、レストランチェーン店の女の子たちみんなひっくるめて呼んでもいい。自分たちが食べているものについてだれも知る必要もないし、うまいパーティにみんな感謝するだろう。そこにどっかのバンドの演奏も手配してもいい。そうすれば食もどんどん進む。
(・・・)
夜になるといつも思う。貯金もなくて、ボディも管理しなかったら、オレはの将来はどうなるんだろうって。すっとスリムな継父だったら最初の結婚もうまくいっただろうし、オレたちの家にトータルをかき乱しに来ることもなかっただろう。母親と二人、でっぷり腹がいなくても母子家庭システムで今までうまくやってきたんだ。オレの年にボディのことを理解していたら、最初の結婚でピシッと背を伸ばして、頼りになるしっかりとした口調で自分の子どもたちの世話もやっていたさ。腹のせいで声の迫力が出しきれていない。濁声のぼやき屋だ。これは事実だ。
なんにもやることがないときは、夜になるといつも鏡の前に立ってこうオレは断言する。
裸のオレはいいカンジ。
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