KIRJOJEN PUUTARHA
フィンランド文学情報サイト

 

 tunnus おすすめ作品

Mennään jo kotiin.    原書名:  Mennään jo kotiin
 (おうちにかえろうよ)
 作者名:  Riina Katajavuori, 1968~
 リーナ・カタヤヴオリ
 出版社 / 年:  TAMMI / 2007
 ページ数:  40
 ISBN:  978-951-31-3898-1
 分類:  絵本
 備考:  Omakuvat

【要約】

今のフィンランド人家庭を記録に残したい、そんな思いから挿絵画家サッラ・サヴォライネン(Salla Savolainen, 1962-)は十数戸を訪ねました。理想化することなく描かれたありのままの生活に、詩人リーナ・カタヤヴオリは子どもの視点で物語を添えました。

お風呂が大好きなヴィルヘルミーナは、人魚になったりアザラシになったり、ときにはシャンプーの宣伝に登場する女の人になったりします。オリバーは、とにかくいろんなものをガラクタにして調べます。エミルは、悲しみの場所を段ボールで作って、悲しみが過ぎ去るのをその中で待ちます。エリナは、除雪車が取りこぼした雪の塊をけって遊びます。マッティは、トランポリンで宇宙飛行士ごっこをしたり、黒い壁を星空にしたりするのが得意で、ヤンネは、ラッキーナンバーを見つけるのが上手です。

どの部屋も散らかり放題で、もので溢れています。でも、その散らかり方にも遊び方にも、子どもなりにこだわりとルールがあって、スケールの大きな想像力できちんとまとまっているのです。

【抜粋訳: p.14】

雨どいのほりだしはけっこうたいへんだ。カツ、カツ、カツ。けりかたにもコツがいる。うまくあたれば、雨どいの中からゴオォと音が聞こえてきて、巨大な氷のかたまりがあらわれる。それをソリでダイヤモンド鉱にはこんで、ふたたび雨どいにもどってける。氷はいちどに出てこないんだ。ダイヤモンド鉱でかたまりを指輪用にカットしたら、宝石として女の子に売る。

つららも好きだよ。ぺろぺろなめながら、雪に残ったリスの足跡を調べる。リスはジャンプがうまいんだ。雪もおいしいし、夏は砂もいい。ぼくはなんでも食べる。

雪がとけはじめたら庭でバケツにサイダーをつくる。材料は水と砂と雪で、バケツにぜんぶ入れたらよくかきまぜる。サイダーといっしょに食べるのはマッシュポテトだよ。みぞれとべちょべちょの雪をバケツに入れて、ふったらマッシュポテトのできあがり。雨どいから出てくる水をつかえば、だまができなくていいんだ。

ぼくんちには基地がある。敵をおどすために旗も立てた。おにいちゃんたちといっしょに建てたんだ。ゴミ置き場で見つけたアイロンは、ソリ山でスノーボードにつかったり、小屋のテーブルにつかったりしている。木の上にはキャプテンの見はり台があって、入り口には泥をはらうブラシもある。それもゴミ置き場で見つけた。

ぼくには悲しみの場所がある。それは大きな段ボール箱で、箱の中にはくるくる回るおもしろいイスがある。悲しくなったら箱の中に入るんだ。家でかっている犬のユーリが病気になって動物病院にはこばれたとき、ぼくはそこにもぐった。そしたら悲しみがなくなった。そのあと、ぼくは段ボール箱をぐちゃぐちゃにこわした。そろそろリフォームかなと思ったんだ。

文/訳 末延弘子 リーナ・カタヤヴオリ著『おうちにかえろうよ』(2011)より


おすすめ作品の目次へ ▲このページのトップへもどる