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Rebekka ja talven taikaa    原書名:  Rebekka ja talven taikaa
 (レベッカと冬の魔法)
 作者名:  Tuija Lehtinen, 1954~
 トゥイヤ・レヘティネン
 出版社 / 年:  Otava / 2008
 ページ数:  260
 ISBN:  9789511222361
 分類:  児童書
 備考:  Rebekka ja kesäprinssi
 Nottingham kesällä kello 6
 Sara@crazymail.com

【要約】

町に越してきて初めての冬休みになりました。牧師の父は教会の仕事で慌ただしく、母は高校で美術を教えながらブリーダーの仕事や教会の仕事をこなしています。秋に生まれたベッティナとダイアナの十匹の小犬たちは、すべてもらい手がつきました。そのうちの一匹は、夏の王子さま、ジェリーのもとへ引き取られました。兄のモーセは、教会の塔を陣取って曲づくりに夢中で、堅信キャンプで意気投合したドラムのオッリとキーボードのルプスとボーカルのヘタの四人でバンドを組んで、コイランプトキというバンド名で本格的に活動を始めました。オッリが将来のお婿さんだと心に決めている妹のセルマは、自分の誕生日パーティにオッリの母でクラスの担任のティーナを呼ぶつもりです。

ジェリーとの魚釣りデートは、レベッカの中で思い出になりつつありました。秋から始めたスピードスケートはタイムを伸ばして、オウルで開催される全国大会の選抜選手に選ばれて練習に忙しくなったということもあります。ジェリーが転校生の女の子に熱をあげているということもあります。レベッカに新しい出会いがあったということもありました。今度は、氷上のワカサギ釣りの冬の王子さまです。

琥珀色の瞳と蜂蜜色の髪の美しいワカサギ釣り少年は、動物病院に新しく赴任した獣医の息子で、モーセと同じ中学二年生です。サスカ・ランピという名の少年とは、ファラオがサスカの釣り竿におしっこをかけたことがきっかけで知り合いました。サスカには双子の妹のムスカがいて、ジェリーを含めたチェーングループをあっという間に取り巻きにしてしまいました。驚いたことに、サスカとムスカは、なにかにつけてレベッカに絡んでくるボクシング少女サイヤ・マンテレのいとこでもありました。

せっかく期待されて代表選手になったレベッカですが、そり滑りで足を挫いて大会出場を断念することになりました。そんなとき、サスカがスノーモービルに誘ってくれたおかげで気分も晴れました。さらには、サスカが作っている学校新聞に記事を寄せることになり、レベッカは書くことの楽しさを発見します。

「レベッカ」シリーズは少女向け小説シリーズで、田舎育ちの明るくて天真爛漫な赤毛のレベッカの青春物語です。『レベッカと冬の魔法』は、第一弾『レベッカと夏の王子さま』(今夏に青い鳥文庫より刊行予定)、第二弾『Rebekka tarttuu toimeen(レベッカ、学校へ行く)』(2007)に続く第三弾です。

【抜粋訳: pp. 29-30】

「ファラオのこと、ごめんなさい。まさか釣り竿めがけてすっ飛んで行くなんて思いもしなかったわ」レベッカがサスカに言いました。
「ふつう、ファラオは歩かないぜ」サスカが言いました。
「今日うちで妹の誕生日パーティをやってるの。おわびしたいから、お茶しに寄って行かない?ペッテリ先生も一緒にどうぞ」
「それでそっちは気が晴れるんだろうけど」
「まあいいじゃないか。ちょうど魔法瓶のココアも切れたし、かなり冷えこんできたことだし」ペッテリ先生が言いました。
「じゃあそうするよ」
(サスカってずばずば言うのね)
 レベッカはそう思いましたが、もし自分が同じようなことをされたら、きっと自分も意地悪な態度をとるだろうと思いなおしました。ペッテリ先生は釣り場所にもどって道具を片づけはじめ、サスカも自分の荷物をまとめ、レベッカはファラオのリードをにぎりました。サスカが、準備ができたと合図するようにうなずくと、一行は岸に歩きだしました。来客が二名増えてもあわてることはありません。牧師館のドアはいつでも誰にでも開かれているからです。子どもや女性だらけのお客たちに男性が加われば、父だってうれしいはずです。
(・・・)
 広間ではちょうどカラオケ大会をやっていました。歌うというよりも叫んでいるようなカラオケ大会に、ペッテリ先生もサスカも踵を返すことなく、ゆっくりと釣り着を脱ぎました。そのときになってようやくレベッカはサスカをじっくり見ました。
(十四、五歳くらいかな。背もあってすらっとしてる。琥珀色の瞳に蜂蜜色の髪。いやだ、私ってばどうしたんだろ。さっきまでは印象悪かったのに)レベッカはごくんと息をのみました。
 レベッカはもう一度見てみました。蜂蜜色のゆるやかなショートヘアに琥珀色にきらめく瞳、そして口もとは楽しそうに笑みをたたえていました。

文/訳 末延弘子 トゥイヤ・レヘティネン著『レベッカと冬の魔法』(2008)より


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