【要約】
秋も深まって、森では冬支度が始まりました。リスはリンゴや木の実やベリーを貯えて、冬服へ衣替えしようと思っていたところでした。そんなある日、リスは仮死状態のツバメを見つけました。このツバメは、ほかの仲間の渡り鳥と南へ行くことができずに森に取り残されていました。
リスは、モミの木に建てた自分の家に連れて帰り、苔の毛布をかけて暖めました。献身的なリスの世話のおかげで目を覚ましたツバメは、未知の「冬」に出会い、逃げだしたいと泣きだします。リスにとってはよく知っている冬が、冬が初めてのツバメには恐ろしくてたまらなかったのです。ツバメをなんとか元気づけようとしますが、ツバメの言葉はリスにはわからず、リスの言葉もツバメに通じません。リスは、レンジャクから『鳥語レッスン』という鳥の言葉の本を借りてひっしで覚えたり、都会に住む友だちのハリネズミから、冬に備えてビン詰め保存していたハエを分けてもらったりしました。
仲間たちも、リスとツバメの共同生活が気になってしかたないようでした。留鳥のスズメや地中で暮らしているモグラやトガリネズミがもの珍しさからリスの家を訪ねてきました。ツバメは冬に戸惑っていました。虫も飛んでいないし、ドアを開けると寒いし、地に足をついていないせいか飽きっぽく、群れに馴染めませんでした。ハリネズミからもらったハエは底をつき、リスは、レンジャクが教えてくれた鳥の避難所を頼ることにしました。そこは、仲間の渡り鳥からはぐれてしまったり、南へいっしょに渡ることができなかったりした鳥のための避難所で、地上からは見えないところにありました。ツバメの背に乗って、リスは避難所へ向かいました。地上とくらべて、山も谷も石も穴もなく、「鳥の道はうんと楽でした」。リスは、ハエのお礼に木の実をわたしました。
リスとツバメは、しだいに森の共通の言葉で話すようになりました。あるとき、友人のハリネズミを訪ねに町にでたリスが、ドブネズミに襲われて足に傷を負って帰ってきました。ツバメは、歌を歌ったり、木の実の花のお茶を入れてあげたり、レンゲ蜜を飲ませてあげたり、自分の羽毛を引っこ抜いて毛布にしてあげたりして、リスを介抱しました。親戚ではない森のリスも、仲間のために親身になって看病しました。
冬時計の針がそろそろ春を指し、薄ら氷が割れて雨が木の芽を起こし、クマゲラのドラミングが聞えるころ、リスはツバメとの別れを思いました。夏になれば、リスはリスと、ツバメはツバメと、これから伴侶をえて幸せな家庭を築くからです。
鳥の避難所の春まつりに、リスは特別に招かれました。冬の木の実のお礼に、一足はやく夏の緑の葉っぱをプレゼントされました。リスは、ツバメが新しい伴侶を見つけて空高く飛んでいるのを見て、「ぼくのツバメが飛びたった」と思いました。夏の服に着替えるころ、リスは森で出会ったリスと結婚しました。ツバメがとまっていたモミの木の家の空中ブランコは、子リスの遊び場になりました。
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