【要約】
もうすぐ小学二年生になるハンナは、おかあさんと二人で暮らしています。おかあさんはいつもパソコンに向かって、フィンランド語に訳す仕事をしています。おとうさんはいつもハガキをくれるけど、帰ってこなくなりました。夏になると、実家でいつも遊んでくれていたおばあちゃんはもういません。仕事をしているおかあさんの表情は暗く、悩んでいるようすです。
ひとりぽっちのハンナの心にずっと寄り添ってくれたのは、小さな白いウエスト・ハイランド・ホワイトテリア犬のぬいぐるみのヘルミでした。犬好きだけどアレルギーで飼えないハンナのために、パリの古市でエルヤス叔父さんが買ってきてくれたのです。
ハンナはどこに行くにもヘルミを連れて行きました。おかあさんが手術ために入院することになって、おとうさんと暮らすことになったときも、ヘルミを連れて寂しい心を打ち明けました。おかあさんに言えないこと、不安に思っていること、なんでもヘルミに話していたら、ヘルミがハンナに話しかけるようになりました。おかあさんの病気の再発の心配も、おとうさんに新しい生活が始まって自分から離れていく不安も、ヘルミは強く優しく打ち消して、こんなふうに笑い飛ばしました。
「まだ知らないってことがいいのよ!つまり希望があるってことだもん!」(『ヘルミ』より)
おかあさんの退院、おかあさんの笑顔、いっしょにいられるこの瞬間の幸せ、これからきっと好転するなにか、これから起こる良いことへの期待とともに、ハンナから不安が消えてゆきます。ハンナの心の充足とともに、ヘルミはもう話しかけてこなくなるのでした。
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