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Sov nu, Vesta-Linnéa!    原書名:  Sov nu, Vesta-Linnéa!
 (もうねんね、リンネアちゃん!)
 作者名:  Tove Appelgren, 1969~
 トーベ・アッペルグレン
 出版社 / 年:  Söderströms / 2003 (フィンランド語 Tammi / 2003)
 ページ数:  33
 ISBN:  9789515220998
 分類:  絵本
 備考:  

【要約】

5歳になるリンネアちゃんは、都会のアパートにママとパパとおにいちゃんのポール=アクセルと妹のヴェンドラと暮らしています。

 ある夜、リンネアちゃんは眠れなくなってしまいました。クマのぬいぐるみのサッサをぎゅっと抱きしめても、ママがいくら眠るまえの本を読み聞かせても、なかなか寝つけません。恐い夢を見てしまうからです。リンネアちゃんはママといっしょに寝ようとするのですが、リンネアちゃんの睡眠障害はママをも悩ませることになります。ふたりのあいだに生じる葛藤は、ふたりになにをもたらし、どんなふうに処理してゆくのでしょう。ふたたび、恐い夢をみたリンネアちゃんがママのベッドに向かうと、そこにはもう妹のヴェンドラがいました。ママといっしょにいたいという願いは叶わなかったのです。

 小さいままでありたいという依存と大きくなりたいという自立が、リンネアちゃんのなかで芽生えます。  親と子どもがいっしょになって、「フラストレーションの処理のしかたを、段階的に学習すること(フレドリック・ハルツベリ)」に注目したい作品です。

 挿絵は、優れた児童書イラストに贈られるルドルウ・コイヴ賞を受賞した挿絵画家であり絵本作家でもあるサッラ・サヴォライネン(Salla Savolainen, 1962-)によるものです。サヴォライネンのイラストは、一方で現実的でありながらも、たくさんのイマジネーションをディテールに与え、ユーモラスで楽しい雰囲気を放っています。

 アッペルグレン=サヴォライネンの「リンネアちゃん」シリーズは、ヨーロッパを中心に多数の言語に翻訳され、同書は『リンネアちゃんとモンスターママ』(2001)につづく第二弾で、近刊に『リンネアちゃんとこいぬたち』(2005)があります。

【抜粋訳 p. 21】

「ねえ、リンネアちゃん、きいて」ママがいいました。
「でも、ママのいおうとしてること、あたししってるもん」
「あら、そう?」
「つまり、じぶんのベッドでねなさいってことでしょ」
「まさに、そのことをお願いしようと思ってたのよ」ママは聞いてほしそうにリンネアちゃんをみました。
「ゆっくりねれないと、お仕事もはりきってできないし、家族のめんどうもみれないわ。それにイライラして、おこりっぽくなっちゃう・・・」
「そうなると、だあれも、たのしくないね」リンネアちゃんがつけたしました。
「あら、ママはまえにもおなじこといったかしら?」ママはびっくりしました。

文/訳 末延弘子 トーベ・アッペルグレン著『もうねんね、リンネアちゃん』(2003)より


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