【要約】
「飛びたいなら、怖がっちゃだめだ」
濃い瞳にドレッドヘアー、そして、スケートボードに絶えない家出。この理由で、12歳のヴィーマは、可能性スクールに入学させられた。父親の再婚相手で心理カウンセラーのアヴァントの計らいだ。高い塀で囲まれた水槽のような冷たい建物。そこでは、いじめも競争もなく、すべてがルールに則って"良い子"と子どもの未来がつくられてゆく。入学と同時に、ヴィーマのスケートボードも没収され、前の学校の友人との連絡も取れなくなってしまった。
可能性スクールの生徒には生気がなく、ヴィーマは浮いた存在だった。そこでは、生徒からマスクの型が取られ、地下室のショーケースに保存されていた。型を取られた生徒はみんな、魂を抜かれたような虚ろな目をして、意のままに動かされるマリオネットのようだ。ところが、町の廃屋と化した工場は、別世界だった。スプレー落書き、無造作に放置されたガラクタの山、突風のようにスケートボードを操る少女インティア。工場に足を踏み入れた途端、外の世界の方角や尺度はすっかりその意味をなくし、じぶんがどこに立っているのか、なにが見えているのか、そこではじぶんが中心だった。
可能性スクールに入学して、まもなく、母親が失踪する。そして、規則違反が絶えないヴィーマは学校裁判にかけられ、ルールを守れないものは、ルールの保護を受けることができなくなるという理由で、ペナルティーマークをつけられてしまう。やがて、父親も、ある朝、忽然と姿を消してしまう。
だれも守ってはくれないけれど、じぶんの可能性を取り戻すために闘うことを決心したヴィーマ。彼をインティアはいかに導き、いかに反旗を翻したのか。マスクを取られた生徒は、ほんとうはなにを学校に奪われてしまったのだろう。
「じぶんで決めることが、大事なんだ」と、ヴィーマは意を決して、もうひとつの現実に立ち向かう。
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