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Varatohtori Virta Etelänavalla    原書名:  Varatohtori Virta Etelänavalla
 (カレント先生代理南極へゆく)
 作者名:  Mikko Lensu, 1958~
 ミッコ・レンス
 出版社 / 年:  TEOS / 2006
 ページ数:  188
 ISBN:  9518510946
 分類:  児童小説
 備考:  Varatohtori Virta Pohjoisnavalla

【要約】

カレント先生代理は、砕氷船「ポーラースター号」より一足先に、南極へと出発します。潜水艦で、南極氷の下を調査するためです。潜水艦は、北極での「ストーム号」発見の報酬として、ドイツの極地調査研究所と国際氷協会とザウアークラウト食品会社から贈られました。同行するのは、同僚のハンス、巨漢ネコのヘルムット、オウムのフリッツ、詩吟に興じるAIコンピューターのオスカリと恋人のミーマ、そして、筋骨隆々の芸術家ステファン。今回のペダントは、エリカ・シュワルツという若い女性で、ステファンとカレント先生代理は恋心を抱いているようです。

潜水艦「フラヴィア」に乗って目にする氷の下の世界は、まるで別世界です。ちょっと潜っただけでも、起伏のない氷床とはちがった複雑な地形が目の前に広がりました。襲撃してくるペンギンたちに、カレント先生代理は恐怖を覚えたのも、じぶんの考えを読まれているような気がしたからです。飛行船「ボニータ」では、気晴らしに遠出をしながら、南極の測量調査をしました。

今回も、カレント先生代理はハンスとある計画を立てていました。それは、何千キロメートルにも及ぶ氷の下に潜ってみることでした。この探検旅行に新しく仲間に加わったのは、南極に移住した11歳の少女ヴィルギリアと、そのペットの氷蛇ヴァーミセルです。ところが、船は氷の嵐に遭遇し、レーダーも壊れて、遭難してしまいます。

はたして、一行は助かるのでしょうか?そして、ペンギンたちのテレパシーとはいったいなんなのでしょう?

【抜粋訳: p. 142】

ヴィルギリアはヴァーミセルの首ねっこをつかもうとしたけれど、もがいてくねりながら壁伝いにするすると逃げていった。ぼくらは慌てて広間に追いこんだ。ヴァーミセルが操縦テーブルに這いあがって、レバーを誤った方向へいっきに下ろしてしまうことを心配したからだ。結局、ヴァーミセルはステファンの腕のなかに落ち着いて、シャツの下に頭を隠すと、巨木の枝に休んでいる蛇のようにしっぽをぐるりと腿に巻きつけた。ふいにぼくも、視界を遮られた蛇行トンネルが怖くなった。氷の下にいると、いつもすこし不安になる。そう簡単に上がってこれないし、もぐらの穴に入りこんでしまった今、出口も一本しかないからだ。光と影の移ろいが錯覚を起こす。なんだか、トンネルの壁が縮んだり、呼吸したりしているみたいだ。ぼくらは、巨大な氷蛇に呑みこまれたようだった。引き返そうと言ったぼくに、だれも反対しなかった。

文/訳 末延弘子 ミッコ・レンス著『カレント先生代理南極へゆく』(2006)より


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