【抜粋訳:p. 7, 12, 19, 23, 24, 40, 42, 49, 50, 65】
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p.7
一夜一夜
森が薄らぐ
茎からぽとり
アリはぐるり
もぎたてのコケモモを
アリ塚の電灯に
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p.12
灯りを消す
月は夜の丸いランプ
夜にむかって澄みわたる
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p.19
芝は雪の綿毛に覆われ
空は帳が降りて 蒼い
星は彼方で 明滅する
秋
毎晩 零度を下回る
水晶のように ぴいんと張りつめた零下
庭を歩けば
零下は草のなかで砕け散る
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p.23
枯葉がはらはら落ちてゆく 雪がはらりと降ってくる
過去の夏を悲しまないで
夏は未来にあるんです
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p.24
静かに月が轍を駈ける 河畔の木々は
ぴくりともしない 橋の両端にカンテラが灯る どこにも
生きた光がない 車は駆け足で過ぎてゆく
どこにも生きた音がない
月の運転手さん、月の道をわたって ぼくのところに来てください
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p.40
白樺の 見あげるような梢から
赤い野球帽が
ちらりとのぞく
クマゲラさん
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p.42
夏
肌は 太陽の匂いがする
まるで 小さな子どもの髪のよう
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p. 49
くたびれた木
キツツキが幹をよじ登りながら
ムシのメニューを読んでいる
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p.50
桟橋はタールの匂い
日がな一日 海をながめる
ぼくは フヌケのナマケモノ
海から船が立ち去ってゆく
そこだとフェンスがいちばん低いんだ
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p.65
凪いだ水の鏡に映る
砕け散ったぼくの鏡像
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