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【要約】
ミンナ・パディッラは、シベリウスアカデミー国立音楽学校民俗音楽部にてバイオリンを、また、日本で箏を学び、現在、バイオリン奏者として、箏奏者として、国内外で演奏活動をしています。パディッラは、箏グループ「ヘルシンキ箏アンサンブル(The Helsinki Koto Ensemble)」を結成し、各地で公演を主催しながら、箏の普及に努めています。
演奏活動にくわえて、幼少のころより架空の生き物を描いています。自由自在に伸縮し、多種多様に形を変えて表現する、線画の生き物たち。ときに天真爛漫に軽快なステップを踏み、ときに哀しみの重みに潰されそうになりながらも、ふたたび翼を得て踊りを舞う生き物たち。それは、自我を脱皮するジャン・コクトーのポトマックを思わせ、また、内省からの出発を試みるフィンランドの詩人ミルッカ・レコラのマスクたちを、想起させます。
「描くことは呼吸することです。それはまた、表面よりも深くみることです。他人の人生に感じていることが、イラストで見えてきます。そして、描くことはじぶんの経験を形にすることでもあります」
パディッラの処女詩集『わたしに根っこが生えてきた』には、1992年から2004年までに現れた生き物たちが戯れます。この生き物たちとパディッラの文が、互いを充たしあい補いあうように一体化し、じぶんの根っこを探ります。
【抜粋訳:p. 10, 25, 39, 40, 45, 72, 93, 101, 150】
小さきものの教え
纏わぬ美
眠りびとの浅い夢
さきに眠るはわが肉体
わたしに根っこが生えてきた
必然の出会い
わたしは懸命に生きている じぶん自身の内側で
あなたと月へのまなざし わたしの人生でもっとも高貴なもの
哀しみは油のよう とれずに翼にこびりついて 麻痺させる
文/訳 末延弘子 ミンナ・パディッラ 文/絵『わたしに根っこが生えてきた』(2004)より
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