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Lauluja mereen uponneista kaupungeista    原書名:  Lauluja mereen uponneista kaupungeista
 (海に沈んだ都市の歌)
 作者名:  Markku Paasonen, 1967~
 マルック・パーソネン
 出版社 / 年:  TEOS / 2005
 ページ数:  51
 ISBN:  9518510571
 分類:  詩集
 備考:

【要約】

「僕のコートの裏地には、海のすべての太陽が眩しく光っている」

マルック・パーソネンの四冊目となる叙事詩『海に沈んだ都市の歌』では、ダイナミックに、プリミティブに、そして、イメージのおもむくままに、めくるめく世界が繰り広げられます。そこには、シュールレアリストのような、新しい言葉の結合から生まれてくる新たな可能性があり、迸る精神の運動があり、感覚の躍動が感じられます。冒頭には、フランスの詩人アルチュール・ランボーの「酔いどれ船」が引用され、作品の棹となっています。死と再生、じぶん自身への疾走、今、ここにある自分を超えて、じぶんの存在可能を問う、一冊です。

【抜粋訳:p. 27】

バラード

女が黒い車で湖岸に運ばれ、光沢のある棺に埋葬された。女の目から睡蓮が、髪から水草が生えていた。湖面は女の歌で澄みきって、湖底の粘土は智慧で溢れ、それを魚が汲んでいた。錆と銀の魚が煌めき、泳いで女の目から入ってゆく。黒い車の運転席の後ろに座る女が歌う。湖の水は澄んでいる。暗闇の湖底に車を走らせ、ライトを伸ばして岸から岸へ。夢みるものがやって来た。湖上で羽ばたく鳥たちだ。水面下に気づくと、水中めがけて一羽ずつ滑降し、車窓にむかってダイビングする。嘴で窓を砕き、女をなかから引き揚げた。打ち鳴る羽ばたきに、湖は黒い染みとなる。女は、森の向こうの未知の場所へ運ばれて、目を覚ましたが、なにも覚えていなかった。女の目覚めに、湖水は澄んで、女の目には光が差した。

文/訳 末延弘子 マルック・パーソネン著『海に沈んだ都市の歌』(2005)より


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