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Laulajan paperit    原書名:  Laulajan paperit
 (歌手の紙)
 作者名:  Anja Erämaja, 1963~
 アンヤ・エラマヤ
 出版社 / 年:  WSOY / 2005
 ページ数:  70
 ISBN:  9510303380
 分類:  詩集
 備考:

【要約】

歌手アンヤ・エラマヤは、細やかな観察眼と鋭敏な感覚で、「日常のパロディー劇」を独自の世界観で魅せた。詩集に登場する歌手は中年女性だ。「人生は小さなことからはじまる」ように、微細で偶発的な事柄が大きな事柄に影響を及ぼすこともある。ペトリ・タンミネンの『人生いろいろ』では男性が主人公であったが、エラマヤは女にたまたま生まれたために強いられる女性を自嘲的に描く。一つに絞れない「あれもこれも」人生を生きる女性は、キャリも子どもも欲しいし、朝のお茶にはコーヒーも紅茶も欲しい。足のサイズが27センチであろうと棚の上まで手が届こうと、毎日の仕事に精を出す。そして、サウナ小屋で行儀よく足を十字に組む昔の母の前で、今を生きる私が足を広げる。あるときは「独唱」し、あるときは「合唱」をしながら、生のなかに多くの潜在的なものを認めて体験する。エラマヤの世界では、言葉は戯れを繰り返し、イメージを膨らませ、多様な世界を開いてくれる。

【抜粋訳: p.55】

歌のレッスン

あなたに歌を教えます。爪先を広げて。踵と指の付け根から、根が地下へと深く伸びてゆくんだと、イメージして。膝窩にトマトをはさんで、腰に浮き輪を付けているんだと、イメージして。背中はX、胸は開いた扇、首の後ろにはバロックスタイルの襞襟をつけているんだと、イメージして。顎は従僕、鼻の頭にゴムで小箱をくっつけているんだと、イメージして。小箱を反らすように歌って。目に挟まれた二つの穴に向かって歌って。そこから果てしなく流れてゆくから。あなたは睡蓮で、頭がプカプカ浮いているんだと、わかって。あなたの頭は、ヘリウムバルーン、共鳴室、サウンドボックス。フレーズは、ヒュンヒュン飛び交う火のついた矢。聞き手の心に飛んでゆくかしら。あなたの組織が崩れようと、矢は照り輝く。

文/訳 末延弘子 アンヤ・エラマヤ著『歌手の紙』(2005)より


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