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Hiililiekki    原書名:  Hiililiekki
 (炭焔)
 作者名:  Olli Sinivaara, 1980~
 オッリ・シニヴァーラ
 出版社 / 年:  TEOS / 2005
 ページ数:  84
 ISBN:  9518510237
 分類:  詩集
 備考:  Palava maa

【要約】

数々の文芸誌やフランス哲学や詩の翻訳などで活躍する、気鋭の若手詩人シニヴァーラの処女詩集は、同世代の若手詩人アキ・サルメラのように言葉の多義性をためした作品です。

シニヴァーラの詩は、言葉を読むだけではなく、耳で聴いて音を感じ、光を感じて触っているような、五感を刺激する要素を持ち合わせています。言葉が解体され、意味を問いかけるように感覚が刺激され、読んでいくうちに別の感覚も研ぎ澄まされるような読了感が生まれます。

四月の鈍色の空に映し出される光を歌った「春の歌II」では、しじまの中に流れ動く光をシネスセティックに捉えています。

【抜粋訳: p.26】

春の光 II

しばらくすると空にターコイズの筋が走る
凪いだ森のはるか彼方
ミントにくるまれた雪の結晶の波柱

梢のむこう 色は
ますます濃くなって ますます清んでゆく 大気の水はどうやって
その刃を折りたたんでいられるのだろう

澄んで濁って 濁って澄んで
いちばん近い幹に消え
倒された地中海の残り火に浮く幹に消え

空のたったひとつの 最後の色
微かにほのめく空の皿のごく一部
そこから僕の瞳は僕の瞳を食べるんだ

ターコイズの風船は大地を割って流れゆく
弾けた音もそのままに
日没の唾のかけらからぐんぐん伸びる

光みずからの感覚 
結晶に 雫に 光線に 枝に あまねくあったりなかったり
空のたったひとつの 今ここにある色

文/訳 末延弘子 オッリ・シニヴァーラ著『炭焔』(2005)より


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