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Largo    原書名:  Largo
 (ラルゴ)
 作者名:  Ilpo Tiihonen, 1950~
 イルポ・ティーホネン
 出版社 / 年:  WSOY / 2004
 ページ数:  69
 ISBN:  9510296473
 分類:  詩集
 備考:

【要約】

愛と生と死をテーマに、ティーホネンの言葉への熱い想いが凝縮された珠玉。詩として、本として、読まれたものとして、聞かれたものとして、知識として、かけがえのない血潮のように言葉が駆け巡ります。「人生とは、一瞬一瞬の自分の言葉を読むことであり、そのなかに溶け込むことであり、もうひとつの現実になにかを見いだすことです」(サトゥ・コスキネン評)。そのもうひとつの現実に愛をみとめ、それを読むことから生まれてくる詩歌(オード)は美しく響きます。

【抜粋訳: pp.56-57】

兵隊

あなたに 読みます
わたしが 死んだら
手紙が 行きます
闇に包まれ

煙と鉄に
大地が 包まれ
ガーデンテーブルに 微風がそよいで
あなたの手紙を めくるとき

そのとき 読みます
月曜の朝が
積雪に 詰まって
猛吹雪に あなたは目を離さずに 消えゆくとき
そのとき わたしは あなたを星にします

そして
楓の葉っぱが
凍てつき くるりと萎んで
鍵と火薬ケースが
あなたの掌の深奥に ずしりと沈むとき

わたしは 砂まみれの口で たおれます
黒い炎に 包まれます
    そしてようやく わたしは 正しく理解します
わたしたちの愛を

時が来て
 翼を正しながら 立ち上がります
  眼鏡ケースのなかから

文/訳 末延弘子 イルポ・ティーホネン著『ラルゴ』(2004)より


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