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KIRJOJEN PUUTARHA フィンランド文学情報サイト
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【要約】
フィンランドの現代詩を代表する詩人ヘンリカ・リングボムの言葉は、水のように流れ、夢のように多様に世界を繋いでゆく。文法や解釈や比喩にとらわれることなく、言葉の持つ純粋なイメージとリズムで編み上げられる円環的な詩は、着地点ではなく始まりを探求する。
【抜粋訳:p.74】
杖を手に ひとり闇を歩いた、盲人のように 手探りした、はるか下で 瞬く光は、機上の星空の 町のよう 深い底の貝のよう その固い殻が湖で やわらかく脈打つクラゲに 溶けだし 血走った魚が引き裂き 貪る前に、影も形もなく 深く沈んでいた 残骸が 水面に迸り 水をいっぱい湛えて 胡桃の殻のように浮かんだ、私たちは ならんで町を歩く、見える、見える 葉っぱがぐるぐる渦巻いている、一人が 死んでゆく、大丈夫、目の前は 葉っぱで真っ暗、大丈夫、私たちは みんな死んでゆく、大丈夫
文/訳 末延弘子 ヘンリカ・リングボム著『白いハウンド犬』(2005)より
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