【要約】
ヘルシンキに息子と二人で暮らしている中年女性のイルマは、ある日、屋内マーケットで「モンステラ、譲ります」という掲示板を目にした。譲り主が住んでいる都心からほど遠いケラヴァに向かうものの、家を間違えてしまう。ところが、間違えて訪ねた家が心地よく、思わず世帯調査員だと偽って、人恋しさに各戸を幾度となく訪ねるようになる。
訪問先はケラヴァの集合住宅だった。隣近所同士の付き合いはない。最初の訪問先はヨキパルティオだ。専業主婦のイリヤは解雇された夫の不機嫌な態度に悩んでいる。向かいのヤルカネンは、小さな子どもがいる若い夫婦で近所付き合いを好まない。前管理人の部屋に住むヴィルタネンは酒とジャンクフードに溺れ、ハティラは妻に先立たれ娘には冷遇され介護サービスを受けていた。
いつかは正体がばれてしまうと知りつつも、イルマはケラヴァの住人の心の襞に触れていく。ケラヴァの住人もイルマを通して繋がってゆく。迅速な現代社会から振り落とされてゆく人間の、孤独の奥底に残る温もりを、リンミネンは他者に連なる強さに変える。
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