【抜粋訳: p.14】
雨どいのほりだしはけっこうたいへんだ。カツ、カツ、カツ。けりかたにもコツがいる。うまくあたれば、雨どいの中からゴオォと音が聞こえてきて、巨大な氷のかたまりがあらわれる。それをソリでダイヤモンド鉱にはこんで、ふたたび雨どいにもどってける。氷はいちどに出てこないんだ。ダイヤモンド鉱でかたまりを指輪用にカットしたら、宝石として女の子に売る。
つららも好きだよ。ぺろぺろなめながら、雪に残ったリスの足跡を調べる。リスはジャンプがうまいんだ。雪もおいしいし、夏は砂もいい。ぼくはなんでも食べる。
雪がとけはじめたら庭でバケツにサイダーをつくる。材料は水と砂と雪で、バケツにぜんぶ入れたらよくかきまぜる。サイダーといっしょに食べるのはマッシュポテトだよ。みぞれとべちょべちょの雪をバケツに入れて、ふったらマッシュポテトのできあがり。雨どいから出てくる水をつかえば、だまができなくていいんだ。
ぼくんちには基地がある。敵をおどすために旗も立てた。おにいちゃんたちといっしょに建てたんだ。ゴミ置き場で見つけたアイロンは、ソリ山でスノーボードにつかったり、小屋のテーブルにつかったりしている。木の上にはキャプテンの見はり台があって、入り口には泥をはらうブラシもある。それもゴミ置き場で見つけた。
ぼくには悲しみの場所がある。それは大きな段ボール箱で、箱の中にはくるくる回るおもしろいイスがある。悲しくなったら箱の中に入るんだ。家でかっている犬のユーリが病気になって動物病院にはこばれたとき、ぼくはそこにもぐった。そしたら悲しみがなくなった。そのあと、ぼくは段ボール箱をぐちゃぐちゃにこわした。そろそろリフォームかなと思ったんだ。
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