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Urhea pikku Memmuli    原書名:  Urhea pikku Memmuli
 (メンムリちゃんのぼうけん)
 作者名:  Mervi Lindman, 1971~
 メルヴィ・リンドマン
 出版社 / 年:  Tammi / 2005
 ページ数:  30
 ISBN:  9789513134112
 分類:  絵本
 備考:  

【要約】

メンムリちゃんにはこわいものがたくさんあります。トイレにすみつくワニ、イチゴスープのなかのオバケ、それから泡風呂にいるぶくぶくモンスター。

でも、メンムリちゃんは「こわくないもん、メンムリはもう大きいもん」と強がります。部屋の明かりが消えたとたん、影が大きくなってゆらゆら動きだし、ベッドの下からがさごそ音がしはじめました。あまりにこわくて、メンムリちゃんはどんどん小さくなりました。小さくなって、ドアのすき間から逃げだして、風にさらわれて、窓から外に飛んで行きました。小さくなったメンムリちゃんは、人ごみに踏まれそうになり、高い建物や行き交う車にとまどいます。しかし、メンムリちゃんはこわいと言えません。

こわくないと言えば言うほど、メンムリちゃんは小さくなっていきました。やがて、雨が降りはじめ、茸の下に駆けこんだメンムリちゃんが「やっぱり、こわい!」と叫びました。すると、メンムリちゃんは目を覚まし、お母さんのやさしい子守唄を聞きながら、ふたたび眠りにつくのでした。

勇気とは、こわがらないことではなくて、こわいとちゃんと言えることなのかもしれません。

【抜粋訳】

「おちびさん、おとうさんがおはなしを読んであげようか?」
「いい、いい!メンムリはもう大きいもん、こわくないもん!おはなしなんて、いい!でんきをけして!でていって!メンムリはいまからねるんだから!」
 メンムリちゃんの部屋はしんとなって、まっくらになりました。あれ、なにかすみっこで音がします。ベッドの下にだれかがもぐっていて、ぷんぷん怒っているか、めそめそ泣いているのです。
「くしゅん!」
 金曜日になると、おかあさんがいつもこらしめる、もこもこモンスターかもしれません。もこもこモンスターは、家のなかをわがもの顔に歩いているのです。
 ふとんをかぶって、メンムリちゃんは小さく言いました。
「こわくないもん、メンムリはつよいもん」
 影が大きくなってせまってきました。
(スイッチをつけなきゃ。メンムリはこわくないもん。かげにみられるのがキライなだけだもん。でも、メンムリがすごくすごく小さくなったら、かげはきっとメンムリにきづかない)
 メンムリちゃんは思いました。
 そこで、メンムリちゃんはできるだけ小さくなりました。
「こわくないもん!こわくないよ。メンムリがこわがりだと思うのはまちがいだよ、メンムリはつよいもん」メンムリちゃんはささやきました。
 メンムリちゃんはぶるぶるふるえながら、スイッチをめざして歩きました。メンムリちゃんはこわくて、うーうー言ったり、ふうふう息をきらしたりしました。
「こわいのあっちいけ、こわいのあっちいけ、こわくない。たいへん!」
 メンムリちゃんはとても小さくなったので、スイッチに手がとどきません。
「どうしよう。こっちにくる。たべられちゃう!」
 メンムリちゃんは、こわくてドアの下のすき間から逃げだしました。それくらい、メンムリちゃんは小さくなっていました。かるくなったメンムリちゃんは風に足をとられて、窓から外へ飛んでいきました。
「どうしよう」メンムリちゃんは空を飛びながら泣きべそをかきました。
「こわくないもん!」
 メンムリちゃんは風とかけっこしながら大声をだしました。

文/訳 末延弘子 メルヴィ・リンドマン著『メンムリちゃんのぼうけん』(2005)より


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