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Suomen eäinsadut    原書名:  Suomen lasten eläinsadut
 (子どものためのフィンランド寓話)
 作者名:  Pirkko-Liisa Surojegin, 1950~
 編 者 ピルッコ=リーサ・スロイェギン
 出版社 / 年:  OTAVA / 2001
 ページ数:  163
 ISBN:  9511198181
 分類:  童話
 備考:

【要約】

フィンランドの森に生きる動物たちが、編者ピルッコ=リーサ・スロイェギン(Pirkko-Liisa Surojegin, 1950~)の写実的で繊細なイラストともに登場します。フィンランドの童話に欠かせない頑強で人情に厚いクマや無愛想なオオカミや狡猾なキツネを中心に、カラスにカササギ、ウサギにブタ、アリにリスといった森の住人たちのエピソードが現代の言葉で生き生きと語られます。しかしながら、折に触れて『フィンランド寓話(Suomen kansan elainsatuja)』(エイノ・ライロ(Eino Railo, 1884~1948)編, 1921)を参考にしたというスロイェギンは、語り継がれた雰囲気を古語に映し、昔の農具や生活習慣なども解説を添えて巧みに再現しています。

どうしてクマはアリを食べるようになったのでしょう?ウサギの口元が割れているのはなぜ?そして、あなたはクマゲラの悲しい物語を知っていますか?

【抜粋訳: p.70】

クマとアリ

森をあるいていたクマは、アリにばったり会いました。大きな松の木の下で、小さな生きものの働きぶりを気の毒そうにながめて、こう言いました。

「きみは、ほんとに小さくてどうしようもないなあ。それにくらべて、ぼくはなんて大きくて力もちなんだろう!」

クマがいくら自慢ばなしをしても、アリはなんとも思いません。それどころか、すいっとクマを見あげると、さらりと言いました。

「そりゃ、あなたはわたしよりもずっと大きいし、力もあるかもしれない。でも、わたしほどじゃないですよ!」

こう言いきられたクマは、笑いがとまらなくなるほど、おかしくてたまりません。クマが落ち着くまで、アリは行儀よく待っていました。

「それでは、自分の体と同じくらい大きな石をあごだけで松の梢まで運べるか、力くらべをしましょうよ」

「ばかばかしい!」と、クマは一声あげましたが、その話に乗ることにしました。

アリは地面から自分と同じ大きさの石をあごにはさむと、松の木のてっぺんまで運びました。そして、「着きましたよ」とさけぶと同時に石を下に落としました。クマも自分の体くらいの石をあごにはさもうとしましたが、石はびくともしません。木のてっぺんまで石を持っていくなんて、とうてい無理な話なのです。どうにもしようがないクマは、小さなアリに自分の負けをみとめるしかありませんでした。負けてしまった腹いせにアリをがっと手につかんだクマは、そのまま食べてしまいました。この日から、クマはアリを食べるようになりました。

文/訳 末延弘子 ピルッコ=リーサ・スロイェギン編・絵『子どものためのフィンランド寓話』(2001)より


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