KIRJOJEN PUUTARHA
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Ihana meri    原書名:  Ihana meri
 (すばらしい海)
 作者名:  Kira Poutanen, 1974~
 キラ・ポウタネン
 出版社 / 年:  OTAVA / 2001
 ページ数:  185
 ISBN:  9511176269
 分類:  YA
 備考:

【要約】

ヤングアダルト小説『すばらしい海』は、主人公である15歳のユリアの心と身体の葛藤を描いた物語です。平凡な学校生活、優等生であることへのプレッシャー、単調な家庭生活、明日は今日を繰り返すだけ。テレビや雑誌を飾るモデルやタレントに女性の理想像を描き、クラスメートのスタイルや言動やファッションに焦りを覚え、次々に課される大人になるための条件が、ユリアのなかで苦しみへと変わり拒食症へと陥ってゆきます。

自分の部屋に鍵を掛け、リンゴを一つかじり、腹筋や屈伸を何千回とこなし、空腹に耐えながらジョギングを毎日こなし、学校では優等生を維持するユリア。潰えてしまいそうな生きる意志をふたたび取り戻すことは、はたしてできるのでしょうか。

【抜粋訳: pp.120-121】

朝、起きてシャワーを浴びる。体重を量って、着替えて、キッチンへむかう。リンゴと低脂肪ヨーグルトを食べて、上着をはおる。どんよりとした雪曇、あたしはバス停へむかい、泥まみれのバスに乗って、ケーバ帽子をかぶった乗客のとなりに座る。窓際の席で、もう一回宿題に目を通す。バスから降りる。学校までの道程はけだるい。教室ではいちばん前の席について、授業に耳をかたむける。食堂で食べるのはサラダと水。授業を聞いて、ノートに書き取って、運動して、歌って、指されたら回答する。バスで下校し、帰宅して体重を量る。リンゴを食べて、宿題をやって、リーディングは3回ずつおさらいする。下線を引いて、暗記する。青いノートに単語を書き出し、30分間繰り返し読んだら、外へ出る。1時間のランニング。怒り。家に戻ったら、50回の腕立てふせ、100回の屈伸、200回の腹筋、おしりと太腿のエクササイズを100回ずつ。リンゴと低脂肪ヨーグルトを食べて、体重を量る。睡眠。

文/訳 末延弘子 キラ・ポウタネン著『すばらしい海』(2001)より


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