【ヨウニ・インカラ / 「折り紙」】
2008年に東京ポエトリー・フェスティバルに参加したヨウニ・インカラ(Jouni Inkala, 1966-)の未刊行詩集『琥珀の部屋』より先取りして「折り紙」をご紹介します。
現代フィンランドを牽引する詩人ヨウニ・インカラが、第8詩集『人間は何を知らずにはいられないのか』(2008)以降、編み続けた詩篇がまもなく一冊へと結実します。「折り紙」は、初来日を果たした印象や面影が見える一節となっています。価値が生まれる時のはかり難さ、せつないもの、それをインカラは追いかけます。
【折り紙】
静かで一途な
日本人の精神のように
私の沈黙も
祈り安らぐ
その深奥にあるものを隠すのは鼓膜なのか?
大切な瞬間にそれは鳴りいだすのか?
一瞬は絶えず
包み展く
膨らむ月と共に心はつくられる
私は早すぎたのか―
遅すぎたのか―
決断の瞬間ですら
真なる核は、はかれない
(文/訳 末延弘子 ヨウニ・インカラ著「琥珀の部屋」より)
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